2025 年 65 巻 2 号 p. 193-200
奄美大島に生息する小型コウモリ5種,ヤンバルホオヒゲコウモリMyotis yanbarensis,リュウキュウテングコウモリMurina ryukyuana,シナオオアブラコウモリHypsugo pulveratus,モモジロコウモリMyotis macrodactylusおよびオリイコキクガシラコウモリRhinolophus cornutus oriiの人工構造物の利用について,2023年8月と2024年8月に調査した.人工構造物はいずれも常緑広葉樹林が隣接していた.昼間のねぐらとして,ヤンバルホオヒゲコウモリは隧道天井の水抜き穴や建物壁面内,リュウキュウテングコウモリとシナオオアブラコウモリも隧道天井の水抜き穴の利用が初めて記録された.モモジロコウモリは隧道天井の窪み,オリイコキクガシラコウモリは隧道やボックスカルバートの天井壁面を昼間のねぐらに利用していた.特に,隧道内は多様なねぐら環境を提供しており,各種がねぐら場所を違えていた.人工構造物とそれらに隣接する常緑広葉樹林の存在は各種の保全に寄与すると考えられる.