抄録
日本語は「なる」言語である(池上1981, 2006; 西光2010a, 2010b; 寺村1976など)と言われており,他動詞よりも自動詞がよく使われる傾向が予測される.そこで,自他対応動詞36 対を選び,18 年分(1998-2015)の毎日新聞のコーパスを使って,自動詞と他動詞の使用頻度を比較した.t検定の結果,未然形,連用形,終止形,仮定形,命令形および全活用の総使用頻度のすべてにおいて,自動詞と他動詞の使用頻度に有意な違いはなかった.さらに,使用頻度を自然対数のlogee(x + 0.5)に変換してから同じt 検定で検討した.その結果,命令形以外は36対の自他対応動詞の使用頻度に有意な違いはなかった.命令形については,逆に他動詞のほうがよく使用されていた.また,これらの自他対応動詞の頻度の相関係数は非常に高く(N=36, r=.70, p<.001),自他動詞の対の使用頻度の関連性が示された.本研究は,使用頻度の高い自他対応動詞36 対の使用頻度を比較した結果,自動詞と他動詞の使用傾向に違いがなく,類似した使用傾向であることを示した.