本研究では多義語の語義ごとに特定の語形に偏って現れる使用実態に対して,既存のデータベースを援用し,要因の究明を試みる.対象は先行研究で扱われる味覚を表す現代日本語形容詞とした.まず,先行研究によって示された,語の意味と用法の関連を再現するために,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の分類語彙表情報(加藤・浅原・山崎2019)を活用し,語義ごとの活用形・語形の出現頻度を調べた.次に,偏りが確認された語形に焦点を絞り,語義と語形の結び付きを調べるために,類似の語義を持つ単義語の出現傾向と比較した.最後に,類似度評定(西内2025)を用いて,語形と用例の類似度に基づき分析を行った.調査の結果,語義ごとの活用形・語形の偏りが一部再現できた.再現できた語形の偏りには,単義語の語形の出現傾向と一致しない場合があったことから,語義の意味的な動機付けによって語形が偏っているわけではないと分析した.さらに,類似度の高低から,語義と特定の語形の関連に意味的な動機付けによらない結び付きを示した.
本稿では,方言研究を音声・語彙・文法・談話・言語地図・言語意識・言語行動に大別し,それぞれの領域におけるデータの構築方法や分析方法,注意点について述べる.それぞれの領域で扱われるデータは異なることが多いため,その構築・管理・分析においても注意すべき点が異なる.また,音声のように分析に際して特定のソフトウェアを用いることもあるため,その扱い方についても簡単に示す.これらの解説を通じて,計量的手法を適用した方言研究の現状についても概観する.
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