言語研究における出現数の扱い方,評価について,母集団からの標本調査に基づく場合と,全数調査に基づく場合とに分け,数値計算の試行を交えて解説した. 標本調査における出現数の評価には,検定が有効である.言語調査では用例調査やアンケート調査等の分析でカイ二乗検定が多く用いられる.カイ二乗検定は,変数間の関係性を述べる際などに特に有効だが,標本サイズへの依存が大きく,期待値が極端に小さい場合や標本サイズが極端に大きい場合などには,正確な推定が難しい点に留意が必要である. 一方,全数調査に基づく出現数の評価では,調査対象となった母集団全体の度数が重要である.古典語の資料間比較などでは,粗頻度ではなく母集団全体の度数をもとにした相対頻度を用いる必要がある.