マツダでは,「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を目標に,安全・安心なクルマと社会の実現を目指した商品開発に取り組んでいる。その中で,衝突安全性能開発は高い安全性能と軽量化という背反の関係を高次元で両立させるために,MBD(Model Based Development)を駆使して車両構造を開発している。「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」に代表される車体開発では,高精度CAE技術を用いて,衝突時の荷重を効率的に吸収し,分散して支えるマルチロードパスを進化させた新しいアーキテクチャーを作り上げた。
CX-90では,新しい後輪駆動方式をベースとしたラージ商品群で最大サイズのプラットフォームに,実際の事故・傷害形態の分析からバックキャスティングした衝突安全技術として,高いエネルギー吸収効率を備えた車体構造,相手車保護性能及び歩行者保護性能を進化させ,米国の衝突安全アセスメントであるUS NCAPやIIHSでもトップレベルの性能評価を得ることを目標として開発した。本稿では,代表的な衝突形態である前面衝突,側面衝突,後面衝突及び歩行者保護について織り込んだ車両構造技術を紹介する。