抄録
生体材料の開発はめざましく、中でも人工骨補填材料は古くから臨床に用いられてきた。未だ自家骨に勝るものはみられないが、骨採取にともなう侵襲や手術時間の短縮を目的として使用される場合がある。人工骨補填材料はブロック状のものは成形が容易ではなく、顆粒状のものは形態を付与することが困難であった。リン酸カルシウム骨ペーストは発熱が無く硬化し、初期より固定強度が得られ、硬化までに成形が容易であるという特徴を有しており、特に整形外科領域ではさまざまな分野に応用されている。われわれも顎口腔領域にリン酸カルシウム骨ペースト(以後、CPP)を使用し、その臨床経過について検討した。CPPを使用した27例中3例(11.1%)に術後感染がみられた。CPPは骨組織との親和性が極めて高く、骨伝導能および誘導能を有しているが、自家骨に置換しない。このため、変形を有する顎骨の再建には適しているものの、病的骨折の可能性の乏しい小さな腫瘍摘出腔などの補填やデンタルインプラントとの併用には適当とは思えない。またCPPと骨組織との間に血腫が形成されると感染が生じるため、充填時には十分な止血が必要である。