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~免疫グロブリン療法を中心とした治療戦略について~
辻 靖博, 辻本 美沙, 米田 尚弘, 佐野 仁志, 上山 潤一
2022 年 26 巻 1 号 p.
1-8
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/05
ジャーナル
オープンアクセス
松江市立病院小児科にて過去12年間に川崎病と診断し,加療を開始した174例について,疫学,症状,治療内容,治療成績,血液検査値を検討した.年間11~21例を入院加療しており,季節性,男女比,年齢分布などは全国調査とほぼ同様の傾向を示していた.治療結果は,アスピリン内服のみで治癒した10例を除いた164例中118例(72 %)が免疫グロブリン療法(以下IVIG)単回投与で治癒し,3rd lineまでIVIG追加のみで治癒した症例は164例中145例(88 %)であった.冠動脈瘤を遺した症例は1例(0.57 %)のみだった.9割以上の症例が第6病日までに治療が開始されていたが,治療開始病日が早くなるほど初回IVIG不応症例が増加する傾向が見られた.3つの主要なIVIG不応予測スコアについて当科の症例で計算したところ,感度・特異度は群馬(小林)スコアにおいて56 %・70 %,久留米(江上)スコアにおいて54 %・75 %,大阪(佐野)スコアにおいて28 %・90 %となり,点数が低くても治療に難渋した症例もあれば,点数が高くてもIVIG単回投与で治癒していた症例も多々あった.IVIG反応例と不応例について主な血液検査値を比較したところ,CRP,プロカルシトニン,白血球好中球比率,AST,ALT,総ビリルビンで有意な差が認められた.
当科ではこれまでIVIG不応予測スコアにとらわれず,できるだけIVIG単独で加療するという方針でやってきたが,後遺症として冠動脈瘤合併は1例のみで,この方針は妥当であったと思われた.追加治療に関しては治療薬の選択肢が広がったことから,頻回の心エコーによる冠動脈の経時的評価など個々の患者の状況を慎重に見極めながらより適切な治療方針を迅速に決定していくことが肝要である.
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2022 年 26 巻 1 号 p.
1-1-
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/05
ジャーナル
オープンアクセス
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教育プログラム作成と有効性の検討
藤田 和絵, 山本 美幸, 内田 香澄
2022 年 26 巻 1 号 p.
9-16
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/05
ジャーナル
オープンアクセス
トリアージは,緊急度の高い患者を選定して迅速に治療につなぐことで患者の状態が悪化する危険性を減らす目的で行われる.救急外来で行う院内トリアージは院内で認定されたトリアージナースが行っており,2018年までに救急外来看護師4名と外来看護師12名が認定された.一方,院内トリアージ実施率は減少傾向で,トリアージナースの教育を見直す必要があった.トリアージナースの育成をはかるための新たな教育プログラムを作成し,その効果を明らかにすることを目的に本研究を実施した.対象はトリアージナースの認定を受けた外来看護師12名,方法はアクションリサーチ法で対象者へのアンケート調査と自己評価調査をもとに作成した教育プログラムを実施し,その後に同様のアンケート調査と自己評価を実施した.新しい教育プログラムの実施により,トリアージナースの不安は軽減し,院内トリアージに関する自己評価の向上が認められ,院内トリアージ実施率も向上し,新しい教育プログラムの有効性が示唆された.
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若槻 美雪, 今井 孝, 酒井 牧子, 河野 通盛
2022 年 26 巻 1 号 p.
17-27
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/12
ジャーナル
フリー
松江市立病院は地域の中核病院として一次救急から三次救急医療を24時間受け入れているが,夜間休日は薬剤師1人体制のため妊婦授乳婦に関する薬剤についての問い合わせに十分な対応が困難な場合がある.そこで薬剤師を対象にアンケート調査を行い,問い合わせの多かった当院採用薬の妊婦授乳婦への投与可否一覧表を作成した.また,投与可否一覧表の使用状況を調査し,有用性を検討したので報告する.
投与可否一覧表作成前のアンケート調査では87%の薬剤師が対応に困ったことがあると回答した.問い合わせを受けた薬剤の43%を占めた解熱鎮痛薬と抗菌薬への投与可否一覧表を作成した.投与可否一覧表運用開始後のアンケート調査では解熱鎮痛薬および抗菌薬の問い合わせの全例でこの投与可否一覧表が参考にされており,問い合わせ1件の対応に必要とした時間は解熱鎮痛薬および抗菌薬では8.63±3.23分で,それ以外の薬剤の14.09±8.40分と比べ有意に短時間であった (p=0.0462).今後は要望の多かった薬剤を追加して投与可否表の対象薬剤を増やし,医師や看護師などの医療スタッフと情報共有をはかり妊婦授乳婦に対する適正な薬剤投与をサポートし,チーム医療を進めていきたい.
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杉原 辰哉, 伊藤 麻里子, 川島 展之, 松浦 佑哉, 井原 伸弥, 黒崎 智之, 森山 修治, 上田 正樹, 森脇 陽子 ...
2022 年 26 巻 1 号 p.
28-33
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/12
ジャーナル
フリー
目的:心肺運動負荷試験(CPX)実施時の呼吸数の変化が呼吸代償開始点(RCP)到達の指標として有用であるか検討する.方法:最大負荷時のガス交換比(Peak RER)が1.10以上までCPXを実施した心疾患患者68例から,RCP到達群と非到達群を比較検討した.結果:RCP到達群は56例,非到達群は12例であった.嫌気性代謝域値(AT)からPeakまでの呼吸数変化(ΔRR AT-Peak )は11.4 ± 4.2 vs.4.9 ± 1.8回/分(p<0.001)であり,多変量ロジスティック回帰分析においても有意であった(p=0.010).RCPに到達する負荷に必要なΔRR AT-Peakのカットオフ値を7.0回/分とすると,感度0.875,特異度0.917,曲線下面積0.957,95 %信頼区間0.910〜1.000であった.結語:呼吸数がATから7.0回/分増加するポイントはRCPとほぼ一致しており,CPXの最大運動負荷に到達する指標として有用な可能性がある.負荷終了時を適切に判断するためにAT以降の呼吸数変化を観察することが重要である.
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疑義照会件数からの検討
藤原 直也, 小川 恭平, 宇野 慶子, 酒井 牧子, 河野 通盛
2022 年 26 巻 1 号 p.
34-37
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/12
ジャーナル
フリー
薬剤師による疑義照会は,医薬品の適正使用のために不可欠な業務である.疑義照会の傾向を分析し対策を行うことで不適切な投薬を未然に防ぐことが可能と考えられる.当院における疑義照会の内容の調査から,処方時の不適切な投与経路の選択への対策として,電子カルテのオーダリングシステムの設定を変更して投与経路の選択を制限し,注射薬の不適切な投与経路の選択を防ぎ疑義照会の件数を減らすことが可能と考えられた.そこで,本研究ではオーダリングシステムの設定変更前後の疑義照会件数の比較を行い,その効果を検討した.対策前では全処方せん76,022枚中,投与経路の誤選択は17件,対策後では全処方せん73,101枚中,投与経路の誤選択は5件であり,有意に減少していた.今回オーダリングシステムの設定を変更した薬剤は36剤であったが,今後も疑義照会内容の分析を継続して行い,設定する対象薬剤の拡大やこの設定変更でも防げなかった不適切な処方について注意喚起を行う必要があると考えられた.
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大前 敦子, 多田 佳司, 石倉 誠, 飴谷 資樹
2022 年 26 巻 1 号 p.
38-44
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/12
ジャーナル
フリー
二重エネルギーCT(Dual-energy CT)の臨床導入により,不顕性骨折の診断にこの技術を用いた仮想カルシウム除去画像(Virtual non calcium image:VNCa画像)が普及している.VNCa画像は各装置メーカーにより専用のソフトがあるものや他のソフトを利用するものなど解析方法があるが,基本的な原理は従来のCT画像から,二重エネルギーCTによりカルシウム成分のみの画像(Ca画像)を作成して差分することで骨髄内の浮腫や出血の画像を抽出することである.VNCa画像は股関節や脊椎などで不顕性骨折の検出に約90 %以上の感度,特異度があるとの複数の報告がある.しかし,我々は現場でしばしば偽陰性,偽陽性の判断が難しいことがあり,その原因としてアーチファクトや体動によるもの,解析における設定パラメータによるものなど様々な要素が考えられる.当院のVNCa画像の解析方法は専用ソフトを使用せず,造影用のソフトを用いて解析する方法であり,解析パラメータに関する詳細な報告はない.
そこで,Ca画像を作成する過程のエネルギーに注目して,理論値と実測値を比較して最小誤差のエネルギーから正確なCa画像を作成することにより最適なVNCa画像を取得することができるのではないかと考えた.その結果,最適なエネルギーは40 keVと50 keVでカルシウムを規定するエネルギー依存に起因する傾きは0.72であることが明らかになった.
また,本研究の方法で作成した臨床画像は従来法と比較して特異度の高い画像になり偽陽性の症例を減少することができる.VNCa画像の解析時のパラメータに関する報告は存在せず,本法で明らかになった至適条件は同じ装置の普及状況を考慮すると波及効果は高く,有益な情報である.
不顕性骨折の診断のための二重エネルギーCTによるVNCa画像作成のための至適条件は40-50 keV,DEGは0.72であった.従来法と改良法のVNCa画像の併用は不顕性骨折の診断精度を向上させる可能性がある.
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眞砂 俊彦, 星野 貴洋, 山口 広司, 武田 賢一, 竹下 美保, 瀬島 健裕
2022 年 26 巻 1 号 p.
45-48
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/12
ジャーナル
フリー
症例は60代,男性.他院で頻尿と尿閉に対し内服治療を行っていたが,状態が改善せず,当院紹介となった.前立腺肥大症の診断にて経尿道的前立腺切除術を施行し,前立腺癌が確認された.PSA 1,186 ng/mLと高値を呈し,画像検査で多発骨転移を認め,cT4N0M1bの診断にて,CAB療法を施行した.投与から3ヵ月でPSA 54.4 ng/mLまで低下したが,半年後には184 ng/mLと急激な再燃傾向を呈した.転移性去勢抵抗性前立腺癌と診断し,新規ホルモン剤としてアビラテロン酢酸エステルを投与したが,PSA 446 ng/mLと改善しなかったため,DP療法を開始した.DP療法を12コース施行し,PSAが19.1 ng/mLまで低下した時点で,BRACAnalysis®診断システムを実施し,陽性であったため,オラパリブの導入に変更とした.その後も継続投与としPSA 1.21 ng/mLまで低下し,有害事象もなく,600 mgで現在も継続投与を施行している.オラパリブはBRCA遺伝子変異陽性を認めた後に使用可能となるが,本検査の診断陽性率は低く,その使用は限定的である.遺伝学的検査の実施時期などの課題も多く,今後も症例の蓄積が必要と思われた.
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福本 陽二, 安井 千晴, 柳生 拓輝, 梶谷 真司, 本城 総一郎
2022 年 26 巻 1 号 p.
49-56
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/12
ジャーナル
フリー
進行食道癌の治療は,根治性と再発リスクを考慮した手術が必要であり,根治手術は頸部,胸部,腹部の三領域の郭清が必要で,他の消化器癌手術と比較し高侵襲であり術後合併症や機能障害が問題となる.開胸,開腹による食道切除術は,胸壁への手術侵襲や術後疼痛の影響で,呼吸機能低下や炎症の遷延を来たし,重篤な合併症が引き起こされる可能性が高い.根治性を保ち低侵襲化を図るため内視鏡下手術が導入され,国内の食道切除術は約60 %が胸腔鏡や腹腔鏡を用いて施行され,鉗子操作による可動制限を改善するために様々な工夫がされている.また,近年ではロボット支援下食道切除術も保険適応となり,さらに低侵襲化が進んでいる.周術期管理においては栄養管理,理学療法介入など多職種との連携をとり合併症の低減とQuality of Life(QOL)の改善が図られている.
今回,食道癌に対する低侵襲手術として,2症例に胸腔鏡下食道切除術を施行した.胸部操作において,鉗子操作の制限を補うべくテーピングを用いた術野展開を行い,腹部操作では,胃管を愛護的に把持し,上腹部切開創をより縮小させた用手補助による胃管作成を施行した.また,周術期経腸栄養を可能にするため術中に腸瘻造設を行った.症例1,2における手術時間はそれぞれ505分,551分で,胸腔操作時間は243分,250分であった.入院期間は26日,21日であった.周術期合併症は,一時的な反回神経麻痺のみで約3ヶ月で改善した.また,術前Prognostic nutritional index(PNI)値から合併症および予後予測し栄養管理を十分に行い,経過とともにPNI値は改善傾向を認めた.
胸腔鏡下食道切除術の導入のために,事前に手術操作の討論を手術スタッフで行い,鉗子制限を補うテーピングを用いることで円滑な手術進行が可能となり,また,術後早期の栄養管理介入,理学療法介入を行うことで円滑な術後経過を得ることができた.
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安井 千晴, 福本 陽二, 柳生 拓輝, 梶谷 真司, 本城 総一郎
2022 年 26 巻 1 号 p.
57-64
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/13
ジャーナル
フリー
胆嚢捻転症は,胆嚢の血流障害をきたす急性腹症であり,急速に壊死が進行し致死的状態となるため,早期手術介入が必要である.急性胆嚢炎と診断され,術中に胆嚢捻転症が判明する事がある.2017年1月から2021年5月までに当院で経験した4例の胆嚢捻転症を検討した.4例のうち,術前に胆嚢捻転症と診断されたのは1例のみだった.症例1は54歳女性,右季肋部痛を訴え経過観察入院となり,入院3日目に症状増悪と炎症所見の悪化を認め造影CT検査,MRI検査を施行した.胆嚢は腫大し壁肥厚を認めた.肝床部への付着が少なく,胆嚢軸が偏位していたため,胆嚢捻転症と診断し,緊急で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢は体部から頸部まで黒色調に壊死を認め,360度捻転していた.捻転を解除し,胆嚢頚部の処理を行い,胆嚢を摘出した.症例2,3は術前に単純CT検査を施行し,胆嚢の腫大と壁肥厚,周囲の脂肪織混濁を認め,急性胆嚢炎と診断し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術中所見にて胆嚢捻転症と診断し捻転を解除した.症例4は,単純CT検査で胆嚢の左側への偏位を認め,壊疽性胆嚢炎とし開腹胆嚢摘出術を施行した.4例とも病理組織診断で胆嚢壁全層に壊死を認めた.術前に胆嚢捻転症と診断し得たのは造影CT検査とMRI検査を施行し,特徴的な画像所見を捉えた1例であった.胆嚢捻転症の診断には超音波検査や造影CT検査,MRI検査が有用であり,複数の検査を組み合わせるとより診断率が上がると考える.当院で経験した症例は,単純CT検査のみでも胆嚢炎の所見を伴っており,いずれも早急に手術を施行する事で,胆嚢捻転症に対して早急に治療介入が可能であった.胆嚢捻転症は180度以上捻転した完全型では自然解除は難しく,胆嚢が壊死し,急速に重篤化する恐れがあるため,可及的速やかな手術を考慮する必要がある.
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小山 卓也, 中村 琢, 山口 直人, 松田 絋治, 佐貫 仁宣, 広江 貴美子, 太田 庸子, 岡田 清治, 門永 陽子 ...
2022 年 26 巻 1 号 p.
65-72
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/13
ジャーナル
フリー
症例は74歳女性.左前胸部痛あり,近医から当院の救急外来に紹介受診.心エコー図検査で左室心尖部から前壁中隔中部の壁運動異常と左室基部の過収縮を認め,左室流出路狭窄による僧帽弁の収縮期前方運動と中等度の僧帽弁逆流を認めた.急性心筋梗塞,タコツボ型心筋症を疑い心臓カテーテル検査を行い,左前下行枝 #7の閉塞を認めた.左室流出路狭窄が原因と考えられる血圧低下を認めたため,短時間作用型β遮断薬(塩酸ランジオロール)投与を併用しながら冠動脈インターベンション治療を行った.術後,心エコー図検査で左室基部の過収縮と左室流出路の圧較差は改善していたが,左室心尖部の菲薄化と壁運動異常は残存しており,左室心尖部に血栓像を認めた.抗凝固療法を開始し,心臓リハビリテーションを継続,壁運動異常は改善傾向を認め,心尖部血栓は消失した.急性期心筋梗塞に左室流出路狭窄を合併すると,低血圧による心原性ショックや心破裂などの合併症による死亡例が報告されている.このため早期の発見とβ遮断薬投与などの併用による治療介入が重要である.また,広範囲の壁運動異常が認められる場合は慢性期の心尖部血栓の形成にも留意する必要がある.
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2022 年 26 巻 1 号 p.
140-141
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/06/13
ジャーナル
フリー