松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
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当院緩和ケア病棟における摂食・嚥下障害例の主原因と対応についての検討
徳田 佳生藤本 一夫吉野 陽三政所 寿美黒崎 和美
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2009 年 13 巻 1 号 p. 33-38

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抄録
【目的】癌末期の摂食・嚥下障害患者のうち、緩和ケア病棟へ入院となった段階での摂食・嚥下リハについて検討した。【方法】平成18 年4 月~ 20 年3 月の2 年間で、松江市立病院緩和ケア病棟入院中に摂食・嚥下障害でリハ科紹介となった患者17 例を対象とし、病状経過から推定される原因別に以下の3 群に分類し、リハ科介入後の経口摂取到達レベルを検討した。A 群:全身状態・意識レベルの悪化(癌終末期の衰弱6 例、頭蓋内腫瘍4 例)、B 群:口腔・咽頭の形態・機能障害(口腔咽頭癌2 例、反回神経麻痺2 例)、C 群:癌の病態進行以外の原因(偶発的絶食2 例、顔面神経麻痺1 例)。【結果】上記2 年間でリハ科紹介となった患者のうち摂食・嚥下障害の割合は、病院全体では1,807例中149 例(8.2%)に対し、緩和ケア病棟からは59 例中17 例(28.8%)と高率(P<0.01)であった。依頼時の摂食状況は食事のみ4 例、お楽しみ程度7 例、絶食6 例であり、絶食はA 群に5 例と多く、意識清明はA 群10 例中1 例、B 群4 例中4 例、C 群3 例中2 例とA 群で病状不良であった。ビデオ嚥下造影(VF)はB 群の1 例のみに施行された。言語聴覚士による嚥下訓練・摂食指導を13 例に対し平均11.2 日間(最長30 日)施行した。C 群3 例は全例常食~軟菜食摂取可能となったが、A・B 群では摂食不能7 例、お楽しみ程度4 例、次第に悪化3 例と到達レベルは低かった。17 例中16 例の転帰は死亡であり、A 群3 例とB 群2 例は介入から1 週間以内の死亡であった。嚥下訓練自体による肺炎合併はなかったが、B 群の1 例は介入3 日目の休日に誤嚥を起こし死亡された。【考察】癌終末期の衰弱や頭蓋内腫瘍による摂食・嚥下障害は予後不良で、本人・家族の満足感を目標としたアプローチとなりVF まで行うことは少ないが、嚥下障害の主原因として口腔咽頭機能障害が疑われる場合にはVF の適応と思われる。
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