松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
左室流出路狭窄と僧帽弁収縮期前方運動を合併した急性心筋梗塞の一例
小山  卓也中村   琢山口  直人松田  絋治佐貫  仁宣広江 貴美子太田  庸子岡田  清治門永  陽子田中  雄二
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2022 年 26 巻 1 号 p. 65-72

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抄録
症例は74歳女性.左前胸部痛あり,近医から当院の救急外来に紹介受診.心エコー図検査で左室心尖部から前壁中隔中部の壁運動異常と左室基部の過収縮を認め,左室流出路狭窄による僧帽弁の収縮期前方運動と中等度の僧帽弁逆流を認めた.急性心筋梗塞,タコツボ型心筋症を疑い心臓カテーテル検査を行い,左前下行枝 #7の閉塞を認めた.左室流出路狭窄が原因と考えられる血圧低下を認めたため,短時間作用型β遮断薬(塩酸ランジオロール)投与を併用しながら冠動脈インターベンション治療を行った.術後,心エコー図検査で左室基部の過収縮と左室流出路の圧較差は改善していたが,左室心尖部の菲薄化と壁運動異常は残存しており,左室心尖部に血栓像を認めた.抗凝固療法を開始し,心臓リハビリテーションを継続,壁運動異常は改善傾向を認め,心尖部血栓は消失した.急性期心筋梗塞に左室流出路狭窄を合併すると,低血圧による心原性ショックや心破裂などの合併症による死亡例が報告されている.このため早期の発見とβ遮断薬投与などの併用による治療介入が重要である.また,広範囲の壁運動異常が認められる場合は慢性期の心尖部血栓の形成にも留意する必要がある.
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