廃棄物資源循環学会誌
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特集:残留性有機汚染物質 (POPs) 対策の方向性
アーカイブ試料を活用した POPs 汚染の時系列評価と今後の課題
国末 達也 高橋 真
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2018 年 29 巻 6 号 p. 423-432

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抄録
2004 年 5 月に残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約 (POPs 条約) が発効し,POPs 廃絶に向けた国際社会の取り組みが開始されたが,依然として野生高等動物等における高濃度蓄積や生態リスクが指摘されている。筆者らの研究グループは,沿岸の底質柱状 (コア) 試料や愛媛大学の生物環境試料バンク (es-BANK) に冷凍保存されていた海棲哺乳類の脂皮試料を活用し,POPs 汚染の時系列変化を解析してきた。その結果,条約発効時に登録された PCBs や DDTs 等の POPs に関しては 1970 年代以降おおむねその汚染は低減傾向にあるが,近年 POPs 条約に追加登録された“新規 POPs”は,臭素系難燃剤の成分 (PBDEs・HBCDs) について汚染レベルの上昇が認められた。また,外洋性鯨種の POPs 蓄積濃度は 2000 年以降も定常もしくは増加を示しており,汚染の長期化が懸念された。途上国等も含む国際的な POPs 監視ネットワークを構築し,長期的かつグローカルな視点から規制効果の検証を進めることが今後の課題である。
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© 2018 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
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