廃棄物資源循環学会誌
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最新号
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巻頭言
特集:中間貯蔵施設周辺地域の融合的な環境創生に向けて
  • 大野 皓史
    2025 年 36 巻 2 号 p. 111-118
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル フリー

    福島県内の除染等の措置に伴い生じた土壌等については,「中間貯蔵・環境安全事業株式会社法」において,「中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」ことが国の責務として明記されている。環境省では,2016年に策定した「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」に基づき,県外最終処分の実現に向けた取り組みを行なってきた。これまでの技術的な検討を踏まえて,2024年度末には復興再生利用の基準等を策定し,最終処分に係る複数選択肢の提示を行なったところであるが,今後さらなる理解醸成の取り組みを進めつつ,技術的観点と社会的観点からの検討を両輪として県外最終処分に関する議論を進めていく。

  • 今井 啓祐
    2025 年 36 巻 2 号 p. 119-128
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル 認証あり

    中間貯蔵・環境安全事業(株)(JESCO) は,2014年12月に改正された中間貯蔵・環境安全事業株式会社法に基づき,環境省からの委託を受けて,中間貯蔵を行うことに加え,中間貯蔵事業に関する調査研究および技術開発を行なっている。

     2016年4月に,環境省によりとりまとめられた「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」において,福島県外での最終処分を30年以内に達成するために,2024年度末までに減容・再生利用基盤技術開発を一通り完了することが目標とされている。

     本稿では,JESCOが公募型実証事業,国直轄型実証事業,(国研)国立環境研究所との共同研究としてこれまでに取り組んできた除去土壌等の減容・再生利用に関連する技術実証事業について報告する。

  • 遠藤 和人, 三成 映理子, 山田 一夫, 田中 悠平
    2025 年 36 巻 2 号 p. 129-138
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル フリー

    中間貯蔵施設に保管されている放射性物質汚染廃棄物の内,溶融飛灰の県外最終処分に向けた技術シナリオについて代表的な3つのシナリオ(非濃縮,バランス,最大濃縮)について紹介する。また,技術的課題として非濃縮シナリオにおける飛灰のセメント固型化,最大濃縮シナリオにおける二段階化学共沈法について詳述する。現在,県外最終処分についての方式は決定していないが,封じ込め施設である最終処分場の構造や維持管理の役割,そして,施設成立性評価に向けた考え方についてもとりまとめた。最終的にどのような減容化シナリオが選択されるかはわからないが,どのシナリオに対しても技術的課題を解決するための準備が重要と考えられる。

  • ――照射・保持温度,飛灰混入依存性――
    熊谷 純
    2025 年 36 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル 認証あり

    放射性物質を含む高炉セメントB種とジオポリマー硬化体からの水素分子(H2)発生量を見積もるため,崩壊熱を模擬して室温から90℃の異なる温度で試料をγ線照射・保持し,照射から4週間までの期間にその積算GH2値を求めた。その結果,セメントの場合はγ線照射時に発生したH2が試料体内拡散律速で試験体外に放出していることがわかった。その積算GH2値は90℃照射・保持試験体で0.45に達し,照射後4週間で放出しおわる様子は確認できなかった。また,飛灰が混入すると,その値は約4倍にも上昇した。硬化体中の化学結合水から,液体水より大きなGH2でH2生成することが明らかになった。一方,ジオポリマーの場合は照射後,室温であってもすぐに試験体外へすべてのH2が放出され,そのGH2値は最大0.2であった。飛灰を導入すると試験体内拡散律速の様子がみられたが,セメントの場合のようなGH2の増加はみられなかった。

  • 乾 徹, 庭瀬 一仁, 半井 健一郎
    2025 年 36 巻 2 号 p. 147-156
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル 認証あり

    福島第一原子力発電所事故により発生した放射性セシウム(Cs)によって汚染された可燃性廃棄物は,焼却および熱的減容化を経て,溶融スラグおよび放射能濃度が高い熱処理飛灰として中間貯蔵施設内に貯蔵されている。熱処理飛灰は中間貯蔵後に県外最終処分を行うため,飛灰安定化体の放射能濃度や溶出特性に応じた最終処分施設構造と安全性評価手法を確立する必要がある。本稿では,既存の産業廃棄物遮断型最終処分場や低レベル放射性廃棄物ピット処分施設の封じ込め構造,安全性評価の考え方を参照した上で,熱処理飛灰安定化体の処分システムの設計においては,人工・天然バリアの収着力を最大限利用し,安全な放射能レベルに減衰するまで生活環境への移動を遅延させることが合理的であることを示した。次に,最終処分施設の人工バリアとして適用が想定されるコンクリートやベントナイト混合土を対象とする,高濃度塩の含有等,安定化体の性状を踏まえた放射性Csの封じ込め性能に関する検討状況を報告し,安定化体の適正な最終処分に向けた今後の課題を整理した。

  • 大西 悟, 万福 裕造, 戸川 卓哉
    2025 年 36 巻 2 号 p. 157-166
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル フリー

    福島第一原子力発電所事故に伴う除去土壌の中間貯蔵・県外最終処分に関しては,技術面や受入地域の社会的受容性に加え,中間貯蔵施設周辺地域のまちづくりと住民とのコミュニケーションが課題となる。本稿では,中間貯蔵施設周辺地域の現状と課題を概観し,飯舘村の環境再生事業の実践知をパターン・ランゲージで解析,抽出した成果を示す。さらに,大熊町を対象にした地域資本フレームワークを用いた分析と参加型でのリーフレット作成の事例を論じる。その上で,両手法を組み合わせた復興まちづくりの将来デザインを考察した結果,地域固有の文脈に応じた合意形成とコミュニティ再構築の重要性が示唆された。

  • 玉置 雅紀, 石井 弓美子, 藤野 正也
    2025 年 36 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル 認証あり

    中間貯蔵施設周辺地域における生物モニタリングを行い,当該地域の自然環境の現状について調べるとともに,福島第一原発事故による生態系サービスの変化についても評価した。ほ乳類のカメラトラップによる調査の結果,中間貯蔵施設周辺地域では10種の動物が観察された。ホンドタヌキ等の里山の生物が他の地域に比べ多く観察されたことからこの地域では里地里山の環境が維持されていることが示唆された。また,アカトンボの一種であるノシメトンボが中間貯蔵施設地域で高い頻度で観察されたことから,この地域では水場を利用する昆虫類が維持できる環境にあることが推察された。生態系サービスのうち供給サービスでは,農林水産業に係る指標のうち,水稲,麦類・大豆,畜産,海面漁業において,避難地域内外ともに震災によって著しく減少し,特に避難指示区域内ではいまだに回復していない状態であった。一方で,調整サービスは震災前後で大きな変化がみられなかった。

  • 村上 道夫, 高田 モモ, 白井 浩介, 武田 理熙, 保高 徹生
    2025 年 36 巻 2 号 p. 176-185
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル フリー

    福島第一原子力発電所事故後に行われた除染によって発生した土壌等は,2045年までに福島県外にて最終処分される。本稿では,質問票を用いたオンライン調査・郵送法での調査・インタビューによる調査を通じて明らかとなった最終処分受入に関する要因を紹介する。これらの調査結果を包括的にみると,最終処分の受け入れには,手続き的公正と分配的公正といった最終処分に至るプロセス,実施主体への信頼,リスク認知,社会的便益認知といった個人の社会心理的要因が関連していた。最終処分の受け入れを進めるためには,特に①再生利用等を全国的に推進することで分配的公正を担保すること,②安全性や経済性に加えて,社会的意義に関しても説明すること,③透明性,説明責任,包括性等の手続き的公正を踏まえたアプローチで不信感を払拭することが重要だと考えられた。

  • 大沼 進, 柴田 侑秀, 相馬 ゆめ, 辻本 光英
    2025 年 36 巻 2 号 p. 186-192
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル 認証あり

    除去土壌問題は多元的公正が重視される。とりわけ,最不利者の最大改善という観点から中間貯蔵施設に土地を提供した方々への思いを汲みとる必要がある。本稿では,多元的正義の観点から,集団討論実験・市民参加ワークショップ・ゲーミング等,さまざまな手法を用いて,除去土壌問題の社会的受容の醸成に向けて進めてきた研究成果を整理した。一連の結果は,福島県民に配慮した対話が可能であること,一定の条件のもとで負担を優先した意思決定が可能であることを実証した。しかし,残された課題もある。客観的・中立的な情報提供は当事者意識を喚起しない。また,福島原発の恩恵を受けていない福島から遠く離れた人々は,負担を負ってきた福島県民のことを考えることが難しかった。このような問題を解決するためのツールとしてゲーミングを開発したが,まだ社会実装の途上にある。最後に,上記の課題を克服するための次の研究課題について述べた。

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