廃棄物資源循環学会誌
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巻頭言
特集:わが国におけるサーキュラーエコノミーの社会実装
  • 細田 衛士
    2025 年36 巻4 号 p. 275-286
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/17
    ジャーナル フリー

    EU を初めとする先進諸国でサーキュラーエコノミーの動きが加速している。一口にサーキュラーエコノミーとはいっても,その究極の姿は一様ではなく,さまざまな形がありうる。サーキュラーエコノミーを実現するにも国や地域によって経済社会構造,生活様式,文化伝統,歴史等が異なり,サーキュラーエコノミーの展開も多様でありうるからである。その意味で,サーキュラーエコノミーを構築するときに経路依存性の概念を無視するわけにはいかない。個の独立よりも人間の関係性を重んじる日本では,市場競争を賢く使いながらも,同業種や異業種の共創関係を活かした独自のサーキュラーエコノミーの構築を模索している最中であり,EU 諸国とは異なった形のサーキュラーエコノミーを作りあげる可能性が高い。ハードローとソフトローをバランスよく組み合わせた制度的インフラストラクチャーを基盤として生産物連鎖制御を適切に行えば,私益と公益をバランスよく実現するサーキュラーエコノミーの構築が可能になる。

  • 波戸本 尚
    2025 年36 巻4 号 p. 287-295
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/17
    ジャーナル フリー

    循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行は,資源の投入量・消費量の抑制,リユース・リペア等による製品の長期利用,リサイクル等の取り組みを進め,廃棄物等を資源として活用し,付加価値を創出することで新たな成長につながるものである。さらに,気候変動や生物多様性の保全,競争力の強化や経済安全保障にも資する施策である。国際的にも循環経済への移行が進んでおり,わが国においても,2024年に「第五次循環型社会形成推進基本計画」をはじめとする政府の政策方針において循環経済への移行を国家戦略として進めることを打ちだした。具体的には,「資源循環自治体フォーラム」をはじめとする地域資源循環の促進,資源循環ネットワーク・拠点の構築を含めた資源循環業・製造業の連携強化による再生材市場の創造,資源循環分野の国際ルール形成への貢献といった政策を,政府一体となって進めている。

  • 森本 泰史, 松田 源一郎, 田島 章男
    2025 年36 巻4 号 p. 296-301
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/17
    ジャーナル フリー

    現在,先進諸国を中心に社会は物で満たされているが,さまざまな問題も発生しており,地球温暖化とともに重要性が高まっているのが資源枯渇問題の解決である。パナソニックグループでは限られた天然資源の消費を削減するために,回収された廃家電から,金属や樹脂の水平リサイクルの取り組みを推進しており,特に都市鉱山となる廃プリント基板からの金・銀・銅を回収・循環させる (PMPループ) の事例と,国内における労働人口の減少や現場の作業負荷等,将来のサーキュラーエコノミー型事業に必須となってくる家電自律分解システムを紹介する。また家電のサーキュラーエコノミー型事業の実例として,従来は廃棄していた初期不良品等を性能や安全性を新品同等に戻す,メーカー認定リファービッシュ事業と,IoT 家電のクラウド情報を使って「お手入れ等のお知らせ通知」を行い,メンテナンスサービスに繋げることで商品を長く使っていただけるビジネスモデルを紹介する。

  • 立本 海, 安田 豊
    2025 年36 巻4 号 p. 302-310
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/17
    ジャーナル フリー

    銅に代表される非鉄金属の需要は,データ社会の発展や再生可能エネルギー,電気自動車の普及によって増加が予測されているが,天然資源からの供給量には限界があり,将来的な安定供給に対する懸念が生じている。そのため,使用済み製品からの金属リサイクルの重要性が高まっており,リサイクルと天然資源からの供給を組み合わせて増加する需要に対応することが必要である。

     JX金属(株)は,非鉄金属業界におけるサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に向けて,資源循環と脱炭素を両立させ付加価値を創造する取り組みを推進している。銅事業においては「サステナブルカッパー・ビジョン」を策定し,持続可能な銅の供給とその発展を目指した施策を示し,2040年までにリサイクル原料の比率を50 %に引きあげる「グリーンハイブリッド製錬」を進めるとともに,100 %リサイクル電気銅の新供給スキームの導入等を通じて,ステークホルダーとの資源循環の共創を図っている。

     さらに,耐久性・高機能を備えた先端素材の開発,大学・企業との連携による技術革新,使用済みリチウムイオン電池のクローズドループ・リサイクル技術の開発および商業化への取り組みを通じて,持続可能な社会の構築に貢献していく。

  • 久保 裕丈
    2025 年36 巻4 号 p. 311-321
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/17
    ジャーナル 認証あり

    サーキュラーエコノミー(CE)の社会実装には課題が多く,本稿では CLAS の取り組みを交え論じる。社会実装は,広範な普及・社会的便益の実現・経済的自立・社会システムへの統合・関連制度の整備の5要件で定義する。

     耐久消費財 PaaS は認知度が低く,本格普及に至っていない。経済的自立には多額の投資と時間が必要で,市場規模への懸念から投融資が慎重になることがある。また,社会システムへの統合では,循環製品の調達や配送・回収インフラ不足が参入への障壁となる。CLAS は高額な耐久消費財を月額制で提供し,返却・購入・資産化を可能にし,長期利用割引も設けている。効率的なシステムとオペレーションインフラで経済性を確保し,在庫稼働率向上や販管費削減を図っている。循環に適した自社製品開発も進め,廃棄物・資源削減や脱炭素化に貢献している。CE 発展は重要であるが,市場認識の曖昧さが課題である。官民学連携による解決をアピールしていきたい。

  • 依田 侑也, 矢野 慧一
    2025 年36 巻4 号 p. 322-331
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/17
    ジャーナル フリー

    建設業界は,わが国の総物質投入量の半分強,総廃棄物量の1割強を占めており,建設資材の資源循環を通じたサーキュラーエコノミーへの移行は急務である。本稿では,建設業界における物質フローと再資源化の現状を紹介し,建設業界における再資源化の事例として清水建設㈱が取り組んだコンクリート・アルミパネル・板ガラス・プラスチックの再資源化の取り組みを通じて得られた,建設業の資源循環における今後の課題と将来展望を整理した。

  • 中田 北斗
    2025 年36 巻4 号 p. 332-341
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/17
    ジャーナル 認証あり

    サステナビリティ全般における情報開示が進む中,循環経済についても開示スキームや指標の検討が進んでいる。開示スキームとしては,持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が Global Circularity Protocol for Business の開発を進めており,2025年11月の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議 (COP30) でver1.0 が公表される予定である。また,EU や中国,日本等においては,情報開示に関する規制や指針も示されはじめている。このようなスキームやルールの整備とあわせて,企業も情報開示や企業価値評価に関して模索しており,いくつかの開示事例やファンド形成等の萌芽事例がみられる。循環経済に取り組む目的は,気候変動・脱炭素等と比較すると多様性があると考えられ,そのため情報開示や企業価値評価においてもその目的を明確化することが重要であり,今後のスキーム等の開発においても多様性に対応できるような柔軟性を担保することが求められる。

  • ──本特集のまとめにかえて──
    村上 進亮
    2025 年36 巻4 号 p. 342-349
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/09/17
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,わが国のサーキュラーエコノミーについて状況の整理と議論を行なった。産業上の特徴,ユーザーの特性といった,その実現における背景的な特徴を踏まえつつ,またこれまでに実施されてきた制度等についても整理を行なった。さらに,昨今議論の深まっている情報開示についてサーキュラーエコノミーでは何が難しいのかといった議論を行うとともに,そのインフラとしてこれを支えていくための情報連携システムについても触れた。

     サーキュラーエコノミーについては,いまだにその概念,具体的なアプローチ等,さまざまな面で同床異夢的な状態にある。その状況こそがわが国にとって,さまざまな面でインセンティブをとる機会になると捉え,多様なアプローチから取り組みを進めていくべきである。わが国の築きあげてきたこれまでの循環型社会への取り組みの上に,こうした新しい取り組みが重なり合っていくことで,わが国独自のサーキュラーエコノミーが築きあげられていくことが期待できる。

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