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創薬最前線
オレキシンの神経科学と創薬
櫻井 武長瀬 博
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2016 年 26 巻 4 号 p. 170-175

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抄録

オレキシンは、視床下部外側野に局在するニューロン群によって産生される神経ペプチドであり、さまざまな行動をサポートするために必要な覚醒を維持する機能をもっている。オレキシン産生ニューロンが変性・脱落することによりナルコレプシーが発症する。一方、オレキシンの不適切なタイミングでの過剰産生は、不眠症の病態に関与する可能性がある。オレキシン受容体拮抗薬はすでに不眠症治療薬として実用化されている。筆者らはナルコレプシーの有効な治療薬の創出を目指し、テキサス大学で見出されたヒット化合物中のスルホンアミド基に注目し、さらに、拮抗薬の構造がオレキシンAに比してかなり小さいことに留意して拮抗薬の構造の伸長を実施した。その結果、世界で初の、高活性で選択性の高い作動薬、YN-1055の創出に成功した。次いで、水溶性の高いYNT-185も得て、脳室内、腹腔内投与ともに覚醒効果を確認した。さらに、YNT-185の全身投与でのナルコレプシーモデルマウスでの治療効果も確認できた。

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© 2016 公益社団法人 日本薬学会
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