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最新号
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巻頭言
創薬最前線
  • 秋山 泰
    2026 年36 巻2 号 p. 65-69
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル 認証あり

    東京科学大学は、大学統合を契機として「中分子創薬コンソーシアム」を設立し、次世代の創薬研究基盤の構築を進めている。本コンソーシアムは、旧東京医科歯科大学の核酸・ペプチド創薬治療研究センター(TIDE)および旧東京工業大学の中分子IT創薬研究推進体(MIDL)の研究者を中核として、医学・生命科学と情報科学・工学の融合による新しい創薬研究の推進を目的としている。核酸医薬、ペプチド設計、AI創薬、分子シミュレーション、データ基盤、ドラッグデリバリーなどの多様な研究領域を結集し、難病・希少疾患を対象とする新しい中分子医薬の創出を目指す。2025年8月にはキックオフ・シンポジウムが開催され、大学内外の研究者による講演を通じて研究構想と最新成果が共有され、本コンソーシアムは産学官連携による新しい研究拠点として本格的に活動を開始した。

WINDOW
  • 関岡 竜一
    2026 年36 巻2 号 p. 70-74
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル 認証あり

    本稿では、2023年10月から2年間、米国UF ScrippsのMatthew D. Disney研究室に研究留学した経験を紹介する。RNA分解薬RIBOTACs創出のためのRNAバインダーおよびRNA分解因子リクルーターの探索をDNA Encoded Libraryを用いて取り組んだ。RNA構造の柔軟性や選択的低分子取得の難しさといった課題に直面しながら、化学・分子生物学・データ解析を統合した研究手法を習得した。分業のない研究環境で、結合評価を含む実験工程を一貫して担当し、英語での活発な議論とPIとの密な対話を通じ、研究者としての視野を広げた。さらに、米国アカデミアと企業研究の違いを体感できたことも大きな学びであった。本稿では、研究面に加え、文化的・生活面を含めた留学のリアルを伝えたい。

ESSAY
DISCOVERY 2025年度 日本薬学会 医薬化学部会賞 受賞
  • 菅野 修, 渡部 潤, 本間 大輔, 安達 宣明
    2026 年36 巻2 号 p. 80-85
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル 認証あり

    ポリコーム抑制複合体2(PRC2)の触媒サブユニットであるEnhancer of zeste homolog(EZH)は、ヒストンH3の27番目のリシン(H3K27)をメチル化する酵素であり、EZH1、EZH2の2種類のホモログが存在する。EZHはがんの発生と進展に重要な役割を果たしていることから抗腫瘍薬の有望なターゲットと考えられたため、筆者らはEZH1とEZH2の両酵素を同時に阻害し、特徴的なアセタール骨格を有する経口投与可能な化合物群を創出した。これらの化合物はH3K27のトリメチル化(H3K27me3)を強力に阻害することで、血液がん細胞株を中心に強力な抗腫瘍活性を示した。本化合物群より見出されたvalemetostat(DS-3201)は、世界初のEZH1/2阻害剤として2022年に本邦で承認された。

  • 今野 芳浩, 引地 洋彦, 鈴木 亮, 神辺 太樹, 伊村 維晃
    2026 年36 巻2 号 p. 86-93
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル 認証あり
    オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒を促すオレキシンの作用を阻害することで睡眠を誘導する。筆者らは、夜間に優れた効果を示し、翌朝の効果の持ち越しが軽減された薬剤を目指し、「短半減期のオレキシン受容体拮抗薬」の創薬研究に挑戦した。まず、既存のオレキシン受容体拮抗薬のligand-based drug designを用いてファーマコフォアモデルを構築し、脂溶性の低いリード化合物6を設計した。さらに、拮抗活性と薬物動態を重視した最適化により新規1,3-oxazinan誘導体23/ボルノレキサントを見出した。ボルノレキサントは、健康成人における薬物動態試験において、期待どおり速やかに吸収され短半減期で消失した。また、臨床試験において、ボルノレキサント5および10mgはプラセボに対し有意な入眠および睡眠維持効果を示し、翌朝への持ち越しの影響は認められなかった。これにより、目指したプロファイルの薬剤創出に成功した。
DISCOVERY 2025年度 日本薬学会 医薬化学部会 MCS優秀賞 受賞
  • 寺島 裕也, 遠田 悦子
    2026 年36 巻2 号 p. 94-98
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル 認証あり

    がんや線維症等の難治性疾患において、マクロファージの動態制御は重要な治療戦略である。しかし、従来のGタンパク質共役受容体(GPCR)を細胞外から標的とする手法は、受容体の冗長性や副作用から開発が難航している。筆者らはこの限界を打破するため、GPCRの細胞内病態悪化シグナルを統合するハブタンパク質ImmuGreg、なかでも「FROUNT(フロント)」を標的とする新たな創薬パラダイムを展開している。独自の創薬開発プラットフォーム技術によりFROUNTタンパク質とその阻害活性を有する既存薬ジスルフィラム(DSF)を同定し、新規吸入製剤FN-01を開発した。FROUNT阻害はマクロファージの遊走および活性化を抑制し、生体防御・恒常性維持機能を保ちながら疾患モデルで優れた抗腫瘍効果と抗線維化作用を示した。本戦略は難治性疾患に対する次世代の安全かつ有効な標準治療となる可能性を秘めている。

DISCOVERY 2025年度 日本薬学会 医薬化学部会 BMC/BMCL賞 受賞
  • 田中 雄大, 進藤 直哉, 王子田 彰夫
    2026 年36 巻2 号 p. 99-103
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル 認証あり

    KRASは代表的ながんドライバー分子であり、その変異は異常な細胞増殖を促進するため、がんの重要な創薬標的の一つとなっている。グアニンヌクレオチドに対する高い結合親和性と平滑な構造のため、低分子阻害剤の設計は困難を極めてきたが、近年G12C変異によって生じたCys12を標的としたコバレントドラッグが承認され、KRAS創薬における重要なマイルストーンが打ち立てられた。しかし、他のKRAS変異体に対する承認薬は、いまだ存在していない。近年は、広範な変異に対応できるように設計されたpan-KRAS可逆阻害剤の開発も行われているが、薬効の持続性など改善の余地がある。本稿では、KRASの阻害剤が結合するswitchⅡポケット近傍に存在する非触媒性Lys88を標的としたKRAS G12D阻害剤とpan-KRASコバレントドラッグ開発について紹介する。筆者らが見出したリジン反応基2-cyanoarenesulfonamide(CNS)を有する阻害剤は、Lys88との共有結合により、多様な変異KRASのシグナル伝達を不可逆的に阻害した。本結果は、未開拓であった変異由来アミノ酸に依存しない汎用的なpan-KRAS共有結合阻害戦略の実現可能性を示すものである。

SEMINAR
  • 荒川 晶彦
    2026 年36 巻2 号 p. 104-108
    発行日: 2026/05/01
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル 認証あり

    量子コンピュータは、従来のコンピュータにはない量子力学的な特性に基づいて動作し、これまで実行困難であった大規模で複雑な問題を解決するポテンシャルをもつ。創薬分野においても、標的分子の探索やヒット化合物の取得、リード化合物の同定・最適化といった創薬プロセス全般にわたり、量子コンピュータの活用可能性が検討されている。本稿では、まず量子コンピュータとそこで動作する量子アルゴリズムについて解説し、次に創薬分野における量子コンピュータの活用に関する動向について紹介する。さらに、具体的なユースケース探索と実証研究の事例を示した上で、中外製薬における活用検討方針を紹介する。本稿が、読者の創薬分野における量子技術への理解を深め、各組織での活用可能性の検討や実証研究の推進につながる一助となることを期待する。

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