本研究では、放射性同位体元素(RI)標識分子を利用する核医学治療において、がん細胞内に選択的かつ高濃度で産生されるアクロレインを活用する新戦略を提案する。フェニルアジドは、がん細胞内に取り込まれると内在性アクロレインとの[3+2]環化付加反応を経て細胞内タンパク質と共有結合し、強固に固定化される。この特性により
211At、
111In、
90Yなどで標識したフェニルアジド分子が迅速に腫瘍へ到達し、長期にわたり滞留することが明らかとなった。動物実験では、腫瘍成長の顕著な抑制、生存率向上、副作用低減が確認され、本戦略ががん診断および治療の新規モダリティとして有望であることが示唆された。特に、従来のがん標的分子を介さず、細胞内有機反応のみで高い腫瘍選択性と滞留性を実現する点が特徴的であり、がん治療における新たな可能性を拓くと考えられる。
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