MEDCHEM NEWS
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巻頭言
創薬最前線
  • 櫻井 武, 長瀬 博
    2016 年 26 巻 4 号 p. 170-175
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

    オレキシンは、視床下部外側野に局在するニューロン群によって産生される神経ペプチドであり、さまざまな行動をサポートするために必要な覚醒を維持する機能をもっている。オレキシン産生ニューロンが変性・脱落することによりナルコレプシーが発症する。一方、オレキシンの不適切なタイミングでの過剰産生は、不眠症の病態に関与する可能性がある。オレキシン受容体拮抗薬はすでに不眠症治療薬として実用化されている。筆者らはナルコレプシーの有効な治療薬の創出を目指し、テキサス大学で見出されたヒット化合物中のスルホンアミド基に注目し、さらに、拮抗薬の構造がオレキシンAに比してかなり小さいことに留意して拮抗薬の構造の伸長を実施した。その結果、世界で初の、高活性で選択性の高い作動薬、YN-1055の創出に成功した。次いで、水溶性の高いYNT-185も得て、脳室内、腹腔内投与ともに覚醒効果を確認した。さらに、YNT-185の全身投与でのナルコレプシーモデルマウスでの治療効果も確認できた。

ESSAY
特集:構造生物学(創薬へのつながり)
  • 加藤 良平
    2016 年 26 巻 4 号 p. 176-178
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

    今日の創薬研究において、構造生物学の利用は欠かせないものとなっている。構造解析の成功確度の向上や構造を取得するまでに必要な時間の短縮により、構造生物学的手法をベースとした確度の高いStructure Based Drug Design(SBDD)が、創薬に貢献している。また、解析の対象となるタンパク質も従来の可溶性タンパク質に限られたものから、Gタンパク質共役受容体(GPCR)をはじめとした膜タンパク質へとその範囲を広げつつある。本特集では、X線結晶構造解析やNMR による構造解析手法に加えて、低温電子顕微鏡やX線自由電子レーザーなども活用した最新の構造生物学とその創薬への応用について紹介する。

  • 藤吉 好則
    2016 年 26 巻 4 号 p. 179-184
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

    創薬の重要な標的である膜タンパク質の構造研究は、X線結晶学やNMR、電子線結晶学、単粒子解析法などによる解析が加速度的に進みつつある。膜タンパク質の生理機能の詳細を正しく理解するには、脂質膜の中で構造解析する必要があり、電子線結晶学はそのためのよい方法であることが水チャネルやイオンチャネルなどの解析で明らかになってきた。しかし結晶学では、結晶化という一般的には困難な過程を必要とするために、創薬における構造研究の重要性は認識されながら、構造をもとにした創薬の成功例は多いとはいえない。しかし、近年、低温電子顕微鏡を用いた単粒子解析法が大きな発展をみせて、短期間に構造解析ができるようになってきた。それゆえ、構造に指南された創薬戦略の重要性が飛躍的に増すと思われる。

  • 朴 三用
    2016 年 26 巻 4 号 p. 185-189
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

    インフルエンザRNAポリメラーゼは、ウイルスの増殖に中心的役割を担っており、すべての亜型のインフルエンザウイルスにおいてアミノ酸配列の保存性が高く、新規抗インフルエンザ薬のターゲットとして注目されてきた。RNAポリメラーゼは3つのサブユニットPA, PB1, PB2からなるヘテロトライマーで機能しており、筆者らは、RNAポリメラーゼPA-PB1サブユニット複合体の構造解析に成功した。PA-PB1複合体中では、サブユニット同士が鍵と鍵穴のような形で結合していた。この構造はインフルエンザウイルスに特有のものであるため、この結合部分をターゲットにして設計される薬剤は、ヒトへの副作用の心配は比較的小さいと考えられる。本稿では、これらの構造情報に基づく創薬研究を紹介する。

  • 田中 里枝, 岩田 想
    2016 年 26 巻 4 号 p. 190-194
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

    X線自由電子レーザーは、化学結合が切断されるよりも短い時間で、タンパク質結晶からX線回折データを収集することが可能なまったく新しい光源である。これによって、非凍結の結晶から放射線損傷を受ける前にデータを収集することができる。筆者らは、SACLAを使って、生物学的、医学的に重要なタンパク質結晶の解析速度を飛躍的に向上させる技術の開発を行っている。同時に、その非常に短いパルス特性を活かして、タンパク質中での構造変化のスナップショットを撮る動的構造解析も可能となった。

  • 加藤 晃一, 谷中 冴子, 矢木–内海 真穂
    2016 年 26 巻 4 号 p. 195-200
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

    生体分子の構造解析に基づいて創薬研究を展開する際には、標的タンパク質とリガンド分子双方の3次元構造の動きを考慮することが重要である。NMRは、生体分子が示すさまざまな時間的・空間的スケールにおける立体構造のダイナミックに関して詳細な情報をもたらすことができる。特に、常磁性効果を利用することにより、生体分子の大規模なコンフォメーションの変動を容易に検出することが可能となる。本稿では、こうしたNMRの特徴を活かした研究の最新の動向について紹介し、分子構造のダイナミクスを考慮した創薬研究への応用の可能性を解説する。

DISCOVERY
  • 高山 正己, 塩田 武司, 高橋 浩治, 山根 規子, 山田 肇, 武本 浩
    2016 年 26 巻 4 号 p. 201-207
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

    トロンボポエチン(TPO)は血小板増加作用をもつタンパク質である。筆者らは、血小板輸血に代わることのできる経口TPO低分子ミメティクスの創薬を目指した。1996年にTPOレセプターをBaF3細胞に発現させた細胞を用いてHTSを実施し、活性は弱いがTPOと同様の作用をもつHIT化合物を得ることに成功した。パラレル合成により、短期間でチアゾールアミド構造をもった高活性化合物を見出すことができた。この化合物は、高活性ではあったが、溶解度が極めて悪い化合物であった。筆者らは溶解度の改善にフォーカスしてSAR研究を進めた。IsoStarを用いたチアゾリジンジオン構造の変換により、溶解度が改善された“けい皮酸誘導体”を見出した。さらにSAR研究を進め、開発候補化合物Lusutrombopagを見出すに至った。研究当初は化合物のヒト特異性のため、薬効を評価する動物モデルがないという問題点があった。生化学者の作用機序解析の努力により、特異性の本質を突きとめた。その結果により、ヒト型TPOレセプター膜貫通ドメインをもったマウス(TPOR-Ki/Shi mice)を作製し、臨床予測性の高い薬効試験動物を得た。

SEMINAR
  • 川上 亘作
    2016 年 26 巻 4 号 p. 208-212
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

    水溶性が原因で経口吸収性が確保できない化合物の開発に際しては、構造改変、原薬物性の改良、製剤技術による克服の3つの選択肢があるが、本解説では製剤技術による対処について最近の知見を中心に紹介する。自己乳化型製剤は比較的開発が簡便であるが、過飽和状態を形成しやすい手法と比較すると効果が得られにくいことも多く、また利便性に難がある製品となることがある。非晶質固体分散体やナノ結晶製剤は、近年理解が飛躍的に高まっている製剤であり、高い過飽和効果を有することから吸収改善効果も得やすい。一方、これらには特別な製造装置が必要であり、さらに安定性予測が困難といった弱点もある。各化合物について、どの製剤が望ましいかには適性があり、さらには溶解度の上昇が膜透過量の上昇に直結するわけではないため、それぞれの特徴を理解して採用することが開発成功の鍵となる。

Coffee Break
REPORT
  • 斉藤 文彦
    2016 年 26 巻 4 号 p. 216-220
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

    National Medicinal Chemistry Symposium(NMCS)は、ACS Division of Medicinal Chemistry主催で1948年より隔年で開催されている。今回の第35回シンポジウム(NMCS2016)は、2016年6月26~29日までの4日間、イリノイ州シカゴで開催された。29の国・地域から約350名の参加があり、受賞・招待講演である口頭発表が26演題、ポスター発表が109演題であった。1日目は「DMPKに関する最近の話題」と「受賞講演」、2日目は「転写因子ターゲット」、「エピジェネティック メカニズム」と「ポスターセッション」。3日目は「神経変性疾患に対する治療の最近の進歩」、4日目は「オープンイノベーション」と「アンドラッガブルからドラッガブルへ」についての講演であった。本レポートでは口頭発表のなかからいくつかの演題について報告する。

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