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最新号
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巻頭言
創薬最前線
  • 髙橋 秀典, 井川 英之
    2025 年 35 巻 2 号 p. 64-69
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり

    創薬研究に計算化学や人工知能を活用し、成功確率の向上や効率化を目指す試みが近年加速している。弊社は1990年の創業以来、低分子化合物の活性、物性およびADMETプロファイル等の予測を可能とする物理学をベースにしたデジタル創薬プラットフォームの開発を行っており、複数の上市化合物と臨床開発化合物を創出することにより、その有用性を証明してきた。本稿では、筆者らの提唱するpredict-first digital chemistryの概要を紹介するとともに、そのDLK阻害薬プログラムへの応用事例について述べる。特に、標的タンパク質に対する親和性予測(FEP+)を用いたヒット探索、中枢移行性予測モデル(E-sol)等のADMET予測モデルを駆使した化合物の最適化研究を紹介する。

WINDOW
ESSAY
  • 高島 一
    2025 年 35 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり

    PepMetics技術は、蛋白質のαヘリックス構造やβターン構造を模倣した化合物によって蛋白質間相互作用を制御する技術である。独自の骨格に複数の側鎖を付与した構造を基本とした化合物群で構成され、天然物のような特性をもちながら、自在な合成展開と立体制御が可能である。PRISM BioLabは、この技術を基盤として、自社創薬および国内外の製薬企業との共同開発の2つの事業を柱として展開している。現在、2つの化合物が臨床入りしており、今後の進展が期待される。PepMetics技術は、AI創薬や環状ペプチド、AlphaFoldなどの新しい創薬技術と融合しながら、さらなる深化、発展を遂げ、Undruggable targetをdruggableにするべく新たな創薬領域を切り開いていく。

DISCOVERY 2024年度 日本薬学会 医薬化学部会賞 受賞
  • 鈴木 孝禎, 宮田 直樹, 伊藤 幸裕, 小笠原 大介, 飯田 哲也
    2025 年 35 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり

    エピジェネティクスを制御するリシン特異的脱メチル化酵素LSD1の阻害剤探索研究を行った結果、がん細胞から正常細胞への分化を促進するLSD1阻害剤を見出した。その一つであるbomedemstatの臨床開発が進められている。LSD1阻害剤の抗がんメカニズム解析を行った結果、それらのLSD1阻害剤は、LSD1の触媒機能(脱メチル化活性)を阻害することではなく、転写抑制因子であるGFI1とLSD1の複合体を解離することで、抗がん作用を示すことがわかり、酵素の触媒機能を阻害するだけではなく、酵素を含む複合体全体を創薬標的とすることの重要性が示された。そこで、複合体を解離する化合物の創製研究を行った結果、見出した複合体解離誘導剤は、単なる酵素阻害薬には見られない特徴的な薬理活性を示した。

  • 小嶋 哲郎, 白石 拓也, 太田 淳, 棚田 幹將, 野村 研一
    2025 年 35 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり

    抗体や低分子など、既存のモダリティでは創薬が困難なタフターゲットに対する連続的創薬を目指し、薬理活性とドラッグライクネスを両立するヒットを起点に、シンプルな構造最適化のみで臨床化合物を創製することをコンセプトとした中分子創薬プラットフォームを確立した。分子量1500g/mol程度の中分子環状ペプチドを創薬モダリティとして選定し、N-アルキルアミノ酸を豊富に含むペプチドの並列多検体合成法の確立を経て、代謝安定性と膜透過性を兼ね備え得る環状ペプチドの構造的要件を設定した。さらにそれらドラッグライクなペプチドを提示し得るmRNA displayを構築し、細胞内タフターゲットであるKRASに対するヒット化合物AP8784を取得した。AP8784の構造最適化で得られた臨床化合物LUNA18はヒット化合物の活性構造を維持しており、目指した創薬コンセプトが実証された。

DISCOVERY 2024年度 日本薬学会 医薬化学部会 MCS優秀賞 受賞
  • 大出 雄大, 石渡 明弘, Ambara R. Pradipta, 田中 克典
    2025 年 35 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり
    本研究では、放射性同位体元素(RI)標識分子を利用する核医学治療において、がん細胞内に選択的かつ高濃度で産生されるアクロレインを活用する新戦略を提案する。フェニルアジドは、がん細胞内に取り込まれると内在性アクロレインとの[3+2]環化付加反応を経て細胞内タンパク質と共有結合し、強固に固定化される。この特性により211At、111In、90Yなどで標識したフェニルアジド分子が迅速に腫瘍へ到達し、長期にわたり滞留することが明らかとなった。動物実験では、腫瘍成長の顕著な抑制、生存率向上、副作用低減が確認され、本戦略ががん診断および治療の新規モダリティとして有望であることが示唆された。特に、従来のがん標的分子を介さず、細胞内有機反応のみで高い腫瘍選択性と滞留性を実現する点が特徴的であり、がん治療における新たな可能性を拓くと考えられる。
DISCOVERY 2024年度 日本薬学会 医薬化学部会 BMC/BMCL賞 受賞
DISCOVERY 2024年度 日本薬学会 医薬化学部会 ACS賞 受賞
  • 髙﨑 亮助, 伊東 瑛美, 大野 浩章, 山﨑 晶, 井貫 晋輔
    2025 年 35 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり

    MAIT細胞は、ヒトの粘膜組織などに豊富に存在する自然免疫様T細胞の一種であり、感染防御の初期応答を担うほか、さまざまな疾患への関与が示唆されていることから、創薬標的として注目を集めている。微生物代謝産物由来の5-OP-RUは、MAIT細胞活性化作用をもつ代表的な化合物であり、非常に強力な活性化作用を示す一方、容易に加水分解や分子内環化を起こすなど化学的に不安定であるという課題がある。筆者らは、この5-OP-RUの不安定性を解消した新たなMAIT細胞活性化剤を開発するべく、5-OP-RUとその分子内環化生成物の構造的特徴に着目した分子設計を行った。本稿では、その設計戦略、活性と化学安定性を両立した新規MAIT細胞活性化剤について紹介する。

SEMINAR
  • 真下 知士, 石田 紗恵子, 吉見 一人
    2025 年 35 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル 認証あり

    ゲノム編集技術は、遺伝子疾患の治療や創薬に革新をもたらし、CRISPR-Cas9システムによる遺伝子治療研究開発が進められている。ex vivo治療ではCRISPR-Cas9を用いた鎌状赤血球症の治療薬CasgevyがFDAに承認され、in vivo治療ではATTR治療がグローバル治験のフェーズⅢまで進展している。筆者らは国産のCRISPR-Cas3ゲノム編集技術を開発し、遺伝子治療の新たなアプローチを提案する。本技術を用いることで、他家ユニバーサルT細胞の作製、造血幹細胞への効率的な遺伝子改変が可能となる。また、LNP-mRNAを利用したin vivo遺伝子治療を開発し、標的細胞への効率的な遺伝子導入と完全遺伝子欠損、オフターゲット変異のないin vivoゲノム編集を実現した。本研究は、CRISPR-Cas3を活用した次世代の遺伝子治療とmRNA創薬の可能性を示し、より安全で効果的な治療戦略の確立に貢献するものである。

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