2016 年 26 巻 4 号 p. 208-212
水溶性が原因で経口吸収性が確保できない化合物の開発に際しては、構造改変、原薬物性の改良、製剤技術による克服の3つの選択肢があるが、本解説では製剤技術による対処について最近の知見を中心に紹介する。自己乳化型製剤は比較的開発が簡便であるが、過飽和状態を形成しやすい手法と比較すると効果が得られにくいことも多く、また利便性に難がある製品となることがある。非晶質固体分散体やナノ結晶製剤は、近年理解が飛躍的に高まっている製剤であり、高い過飽和効果を有することから吸収改善効果も得やすい。一方、これらには特別な製造装置が必要であり、さらに安定性予測が困難といった弱点もある。各化合物について、どの製剤が望ましいかには適性があり、さらには溶解度の上昇が膜透過量の上昇に直結するわけではないため、それぞれの特徴を理解して採用することが開発成功の鍵となる。