抄録
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う紅斑に象徴される皮膚疾患であり、国内で45万人以上がこの病に苦しむといわれる。治療の第一段階は既存抗炎症薬による炎症鎮静化であるが、皮膚菲薄化等の副作用が報告され、このような副作用のない薬剤の登場が望まれている。Janus kinase(JAK)はサイトカイン産生シグナル上流に存在するリン酸化酵素であり、その阻害薬は自己免疫疾患の新たな治療オプションとして注目を集めていた。筆者らは新規JAK3阻害薬探索の過程で、高活性、高選択的化合物の創出を目指し、分子の三次元性の高さに着目した合成展開を実施した。こうして見出されたdelgocitinibは、臨床試験において期待した効果を示し、JAK阻害薬としては世界初となるアトピー性皮膚炎外用薬(コレクチム®軟膏)として承認されるに至った。