抄録
多剤耐性グラム陰性菌に起因する感染症が世界的に深刻な問題となっており、既存抗菌薬との交差耐性を示さない新たな作用機序を有する感染症治療薬の開発が望まれている。UDP-3-O-acyl-N-acetylglucosamine deacetylase(LpxC)は、魅力的な創薬標的として注目されてきたが、阻害剤上市には至っていない。これまでのLpxC阻害剤には、亜鉛配位パーツとしてヒドロキサム酸官能基が共通して用いられてきたが、この構造由来の毒性懸念がしばしば報告されている。本研究では、FBDDを利用することでヒドロキサム酸官能基をもたない、新たなLpxC阻害剤を創製することを目指した。その結果、カルバペネム耐性肺炎桿菌に対して有効であり、心血管毒性リスクが低いTP0586532の創出に成功した。