2015 年 46 巻 4 号 p. 308-314
医学教育において準備教育は, 臨床で求められる専門知識・技術以外の諸分野の視点・方法について, 生涯にわたって学びつづける学び方を学習する過程である. この準備教育において, 社会科学は重要な柱の1つである. 少子高齢化や慢性疾患への疾病構造の変化により, 今後「暮らしの現場のケア」の領域が拡大する日本において, 社会科学的なアプローチの重要性はさらに増すであろう. 社会科学は医療のおかれている現状や変化の動向を理解する視点や方法を提供し, また臨床現場にあっては, 患者や利用者たちが, 暮らしや人間関係との関わりにおいて何をなぜ問題としているかを知る視点や方法を提供する. そのような社会科学的アプローチを学ぶには, 高年次もしくは卒後研修において, 事例性の概念にもとづくケース・スタディやPBLを繰り返す必要があると考える. そのような教育を可能にするためには, 今後医療専門職と社会科学者が協働して, 教材や教育手法を開発する体制を整えなければならない.