医学教育
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巻頭言
原著
  • 三原 弘, 長南 行浩, 磯山 響子, 鵜飼 渉, 佐藤 直, 辻 喜久, 杉村 政樹
    2026 年57 巻3 号 p. 143-151
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    背景 : アンプロ教育では, 非言語情報を含む教材が求められる. 生成AI教材をFDに用いることで, 低コストで学習者評価のばらつきを可視化できる可能性がある. 方法 : 単一施設の収束型混合研究. アンプロ行動を描いた生成AI動画を作成し, 医学生の授業およびFDに用いた. 学生はアンプロ行動の同定と自由記述を行い, 教員はアンプロ行動の評価と討議を行いアンケートと自由記述に回答した. 量的データは記述統計で, 自由記述はコードブック型主題分析で解析した. 結果 : 学生は規則違反を高率に同定し, 教員の理解度・有用度は高かった. 自由記述では, 学生は問題行動の認識, 内省, 予防・対応を記述し, 教員は評価のばらつき, 形成的フィードバック, キャリブレーションの必要性を記述した. 結論 : 生成AI動画を学生教育とFDに用いることで, 学生の認識と内省, 教員の評価のばらつき認識とキャリブレーションの必要性を可視化し得ることが示された.
  • 橋本 恵太郎, 前野 貴美, 吉原 雅大, 古屋 欽司, 高屋敷 明由美, 鈴木 將玄, 前野 哲博
    2026 年57 巻3 号 p. 152-162
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    背景 : 良質な多肢選択式問題の作成は教員の大きな負担であり, 生成AIによる作問支援が注目されているが, 教員視点の検証は不十分である. 本研究はAI作問支援アプリケーションが教員の作問効率および心理的負担に及ぼす影響を検討した. 方法 : 筑波大学医学類において本ツールを導入し, 2025年度作問担当教員283名に匿名Webアンケートを実施した. 結果 : ツールを使用したと回答した87名を解析対象とした. 1問あたり30分未満で作成できた割合は, 一般問題で29%から64%, 症例問題で20%から60%へ増加した (いずれもp<0.001). 96%が心理的負担は軽減したと回答した. 最大の問題点は過去問参照時のハルシネーションであった. 考察 : ハルシネーションへの対処は今後の課題であるものの, AI作問支援ツールは, 形式調整などの作業負担を軽減することで, 教員の作問効率向上に寄与する可能性が示唆された.
総説
  • 山本 憲
    2026 年57 巻3 号 p. 163-171
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
     近年, 大規模言語モデル (LLM) を基盤とする生成AIの急速な普及により, 学術研究および学術出版の在り方は大きく変化している. 特に論文執筆支援や査読支援など, 研究ワークフロー全体への生成AIの導入が進む一方で, 研究の誠実性, 機密保持, 透明性に関する新たな課題も指摘されている. 本総説では, 2024~2026年に報告された文献および学術出版社や出版倫理団体の資料をもとに, 生成AIが学術研究に及ぼす影響を整理した. 研究者によるAI利用は急速に普及しているが, 利用開示率は低く, 透明性の確保が課題である. 主要出版社および倫理団体は, 人間による最終的な説明責任を前提としたAI利用ガイドラインを提示している. 生成AIは査読の効率化や言語的支援に有用である一方, ハルシネーション, バイアス, 機密情報漏洩などのリスクも存在する. 今後は, 人間の判断を中心としたHuman-in-the-loop型の査読体制を維持しつつ, 適切なAI管理と教育を整備することが重要である.
短報
  • 松岡 徹, 笠井 大, 佐野 裕樹, 古藤田 眞和, 石山 忠彦, 小川 覚
    2026 年57 巻3 号 p. 172-176
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    【背景】生成AIの学習利用が拡大する中, 出力を批判的に吟味する力の育成が重要となっている. しかし, 生成AIの出力を学習者がどのように認識・評価するかに関する知見が十分でない. 読書感想文は自己の解釈や価値観を言語化する学習活動であり, 思考過程が反映されやすい. そのため, 生成AIの出力の批判的吟味の機会となりうる. 【目的】生成AIが作成した読書感想文に対する医学生の批判的吟味の実態を明らかにする. 【方法】麻酔科実習中の4-5年次医学生104名に非医学書の読書と感想考案を課し, AI出力の感想文への評価記述に探索的内容分析を79名に行った. 【結果】212件のコードを抽出. AIの要約力を認める一方, 具体性欠如や内容の相違への懸念, 自己省察や経験の固有性の再認識が生じていた. 【結論】生成AI出力を読書課題の教材として批判的に読む実践は, 学習者の判断力と内省を促す教育的可能性が示唆された.
実践報告-新たな試み-
  • 生野 真嗣, 大塚 勇輝, 時信 亜希子, 三好 智子, 片岡 仁美
    2026 年57 巻3 号 p. 177-182
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
     近年, 生成AI, 特に大規模言語モデル (LLM) の急速な普及により, 医学教育はAIの存在を前提とした再設計を迫られている. 本稿では, 臨床実習直前の医学生を対象とした臨床推論グループワークにおいてマネジメント推論を中心的テーマとし, 学習実践をともに構成し得るPeerとして生成AIを位置づけた教育実践を報告する. 実践の振り返りにおいては, ソシオマテリアリズムの枠組みに基づき, 本実践を学習者-状況-テクノロジー-その他の環境的ダイナミクスが相互に影響しあって成立するものとして理論的に検討した. 生成AIは単なる情報源ではなく, 問いの生成, 根拠づけ, 説明責任の配置を再編する物質的要素として機能し得る. 本稿は, 生成AIの存在を前提とした学習実践の再編過程を記述する観察軸と設計原理を提示し, 今後の医学教育実践への汎用的示唆を与えるものである.
  • 高橋 良子, 日臺 智明, 鈴木 沙季, E.H. ジェーゴ
    2026 年57 巻3 号 p. 183-188
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
     英語医療面接教育では, 英語による認知的負荷と多人数授業での個別フィードバック確保が課題である. 本実践では, これらの課題を解決するために生成AIを学修者の思考を支える「認知的足場 (cognitive scaffolding) 」として導入し, その意義を検討した. 医学部4年次の授業で, 学修者は生成AIとの対話を通じ, 英語医療面接スクリプトの作成と臨床的意図の言語化を反復した. 事前・事後課題の比較の結果, 事後は面接構造が整い, 英語表現の多様化と臨床的意図の明示的な記述が増加した. 生成AIの即時応答が高頻度なフィードバック環境を提供し, 言語運用の負荷を軽減したことで, 学修者が本来の学修目的である面接構成や臨床的意図の言語化に注力できたと考えられる. また, 生成AIへの指示と修正の過程は, 成果物への当事者意識と自己調整学習を促した可能性がある. 本実践は, 生成AIを「思考の代替」ではなく, 「思考の支援」として活用することの有効性を示唆している.
視点
原著
  • 小貫 友暉, 中村 真理子
    2026 年57 巻3 号 p. 195-206
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    背景 : 医学教育分野別評価における「評価疲れ」に対して大規模言語モデル (LLM) の活用可能性を探索するため, LLMによる評価基準への適合性判定の量的・質的妥当性を検証した. 方法 : LLMを用いて分野別評価の書面調査を再現し, LLMと人間の判定一致度の量的検証と, 判定差異の要因の質的分析を行った. 結果 : Gwet's AC2係数は0.91であった. 質的分析により, LLMの判定からは評価基準に準拠した概念が抽出された一方, 人間の判定からは文脈も包含した概念が抽出された. 結論 : 高い判定一致度からLLMによる判定の量的妥当性が示された. 質的には, 基準に準拠する形式的判定モデルとしてのLLMと, 各大学の文脈も考慮する本質的評価モデルとしての人間の判定特性の差異が示唆された. これらは将来的に, LLMが基準適合性を判定し人間が教育改善の議論に注力するという役割分離の設計を検討する上で, 基礎的知見となり得る.
短報
  • 春日 秀朗, 日高 友郎, 遠藤 翔太, 増石 有佑, 各務 竹康
    2026 年57 巻3 号 p. 207-212
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    背景 : モデル・コア・カリキュラムで医療従事者自身の生活習慣改善が求められているように, 医学部生自身の健康教育の重要性が高まっている. 本研究は, 問題解決型テュートリアルを通して学生の主観的健康関連ライフスタイルに変化がみられるか検討した. 方法 : 2021~2023年度の受講者134名を対象に, 実習前後でライフスタイルの主観的評価を行い, 時期 (プレ・ポスト) ×全項目平均のプレ評価に基づく3群 (低・中・高) の二要因分散分析で比較した. 結果 : 全項目平均および全下位尺度でポスト得点が有意に上昇した. 全項目平均および人間関係では交互作用がみられ, 低群では変化が有意だったが, 中群, 高群では限定的だった. 考察 : 実習後, 学生の主観的ライフスタイル評価は全体で上昇した. とくに初期得点が低い学生で上昇が大きく, 高い学生では変化が限られたことから, 実習による変化の大きさは初期水準によって異なる可能性が示唆された.
実践報告-新たな試み-
  • 林 禅之, 米岡 裕美, 伊澤 宜仁, 種田 佳紀, 中平 健祐
    2026 年57 巻3 号 p. 213-218
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
     科学的思考および批判的吟味の基盤となるのが日本語運用能力であるとすると, それを涵養する日本語リテラシー教育の充実は, 医学部において重要な課題であると言える. 特に近年の生成AIの台頭も踏まえると, 読解リテラシーの向上は喫緊の課題ですらある. 本稿では, 医学部初年次における, 読解に特化した必修の日本語リテラシー授業の実践報告を行い, その課題を分析する. 少人数の輪読形式の授業をデザインし, 年度末の会議を経て授業を改善するというサイクルを繰り返した結果, 学生の読解には主に3つの困難パターン (拾い読み, プロセスの不十分な理解, 図表の読み飛ばし) があることが認められた. 授業実践の記述の参照枠組みとして, 哲学者ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム論」を用い, 自然科学における用語の習得を, 語の使用の観点から捉えることで, この実践に適切な記述・分析の観点を与えた.
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