背景 : Health Advocacy (HA) は医師にとって重要なコンピテンシーであるが, 本邦におけるHA教育は未だ発展途上である. 本研究は, 日本の小児科専攻医を対象としたHA教育プログラム「小児科専攻医のためのアドボカシー教育プログラム (Child Advocacy Training : CHAT) 」の教育効果を質的に分析し, 今後のHA教育への示唆を得ることを目的とした. 方法 : CHATの全4回に参加した小児科専攻医6名を対象に, プログラム受講後に半構造化インタビューを実施した. 得られた逐語録を, 主題分析を用いて分析した. 結果 : 「概念理解の深化」, 「実践内容の拡張と複合化」, 「実践環境への考察の拡張」の3つのカテゴリーと12個のテーマを抽出した. 参加者は, HAの概念を具体的に理解し, HA手法を複合的に組み合わせたHA実践に変化させていた. また, 政策に対する想起やHA教育の拡充についての視点を獲得していた. 考察 : CHATの学習を通じて, 参加者は抽象的なHAの知識や技能の獲得にとどまらず, 自己を内省し, 新たな視点と行動を段階的に生成するような経験学習サイクルを促進している可能性が示唆された. 結語 : CHATは, HAに関する認識と行動変容を促し, HA実践能力の基盤が経験学習サイクルにより形成させる点で有効である可能性が示唆された.
抄録全体を表示