人間・環境学会誌
Online ISSN : 2432-0366
Print ISSN : 1341-500X
人と環境とのトランザクションのかたち(コメント論文,<特集>トランザクションの読解と展開)
橘 弘志
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 13 巻 2 号 p. 89-98

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抄録
本稿は、本MERA Journalに掲載される4論文、舟橋國男「建築学における「トランザクショナリズム」を巡る一考察」、太田裕彦「現象学的心理学から見たトランザクショナリズム」、松本光太郎「トランザクションという単位の有効性」、渡部陽介「景観研究におけるトランザクション:農村地域において地域アイデンティティとして認識される生活景」をもとに、トランザクションの概念や形態について考察を試みたものである。本稿では、(1)人と環境との固有の結びつきはどのようにして構築されるのか、(2)そうした個別の環境との結びつきがいかにして共有され得るのか、という2つの問いをべ一スに置き、人と環境とのトランザクションの形態として、次の5つを提示した。(1)固有の環世界を形成する:主体を取り巻く環境は、主体が働きかけて形成した固有の環世界である。(2)環境的存在として振る舞う:人は、環境に対して主体であるともに、他者にとっての環境として振る舞い、それが他者との相互了解を促す。(3)環境として蓄積される:環境は、個別の環世界が社会的に蓄積され、歴史的に蓄積された姿として捉えられる。(4)物語を紡ぐ:人は環境の中で自分達の物語を紡ぐことで、環境に意味を刻み込んでいく。(5)環境が媒介する:環境は、人同士の相互了解を媒介し、社会的関わりを媒介し、社会心理的発達を媒介する。
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© 2010 人間・環境学会
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