人間・環境学会誌
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短報論文
介入調査を通した啓発による熱中症対策の可能性-高齢者の居住施設で事例調査-
柴田 祥江松原 斎樹
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2020 年 22 巻 2 号 p. 19-23

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抄録

高齢者の住宅内での熱中症対策は喫緊の課題である。本研究では,有料老人ホーム(住宅型)居住者を対象に介入調査による室内温熱環境制御の啓発を行い,以下のことが明らかになった。(1)介入前の実態調査アンケートの結果,高齢者の住まいの夏期温熱環境制御の実態は,有効とされている外付けの日射遮蔽装置による対策は充分でないことが分かった。エアコン・扇風機の使用は,居間81.7%,寝室66.7%で,エアコンも扇風機も「不使用」は居間3.8%,寝室13.2%であった。熱中症への関心は全体的に高く,温度計の確認頻度が高い群は,熱中症への関心も高い傾向であった。(2)啓発後に行った10戸を対象にしたモニター調査の結果,シェード設置の評価は,効果があったとの回答は6戸で心理的な効果が確認できた。WBGT読み取り調査では,WBGT計の警告を活用しての室内温熱環境制御の行動を促した。今回の介入調査では,講演会での啓発により熱中症の危険性を自覚し,シェード設置とWBGT計の読み取り調査で,温熱環境改善の可能性を認識したことにより,行動変容が出現したと考える。

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