抄録
都市化が進む社会において、個人の庭は都市の中で自然を経験できる重要な機会を与えてくれる。本研究はそのような個人の庭に対する知覚と推論に関する研究であり、特に居住国と知識の違いがどのような影響を与えるかを検討したものである。刺激として日本の庭の40枚と英国の庭の29枚の写真が用意された。被験者は、植物や農学に関して専門的な教育を受けている学生25名、植物・農学以外が専門の日本人の学生53名、イギリス人の学生19名、ドイツ人学生32名であった。この被験者が1)類似性に基づく庭写真の分類課題と2)庭写真の国弁別課題を行った。類似性分類データはINDSCALで、国弁別課題データは数量化III類で分析された。類似性分類の分析結果は1)被験者全体で考えると庭の知覚において「芝-芝以外の植物・花」次元と「和風-洋風」次元を知覚(類似性判断)の次元としているが、2)それぞれの次元に対する重み付けは日本人の2群と欧州人の2群の間で違いが見られる事を明らかにした。国弁別データの分析結果は1)庭が存在する国の弁別判断は、被験者全体では湾曲した1次元上でかなり良く弁別されるが、2)その弁別力には被験者間で大きな差がある事を示しており、その説明として居住国と専門的教育との影響が大きいことを示していた。これらの結果は過去の研究の知見を裏付けていた。