人間・環境学会誌
Online ISSN : 2432-0366
Print ISSN : 1341-500X
飲食店選択における環境推論と意思決定
羽生 和紀
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ジャーナル オープンアクセス

2006 年 9 巻 2 号 p. 41-50

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抄録
人が環境で行動を行う際には、その環境の状況を理解し、理解した環境の内容や制約を考慮して行動を選択する。本研究は、そのような環境の状況の理解のうち、環境の持つ隠された内容をその外見的な特徴から推論する環境推論と、その推論に伴う行動の意思選択について飲食店を対象にして検討した。順番に提示された27件の幅広い特性を持っ飲食店の入り口付近のファサード写真のそれぞれ対して、154人の大学生が「値段」「客の性別」「客一組あたりの人数」の推論、「清潔さ」「明るさ」などの飲食店の特性の判断、「入りやすさ」の判断を行なった。結果はまず、「値段」「客の性別」「客一組あたりの人数」に関しては推論がかなり正確であることが示された。続いて、共分散構造分析を行なった結果、「自分向き」であるという判断と「店の質」が高いという判断は選択する行動を促進し、一方推論された「高級感」が高いという判断は、選択行動を抑止した。しかし、「高級感」は間接的には「店の質」と関係しており、「高級感」の高さは、「店の質」の高さを通じて、間接的には選択行動を促進していた。この結果は、一つの要素が同時に、直接的と間接的に意思決定に肯定と否定の効果を持っているという両面価値的な意味があるということであった。最後に、本研究の限界と今後の研究の必要性が議論された。
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© 2006 人間・環境学会
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