中東レビュー
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論稿
米国ユダヤ人の対イスラエル観の変化と新しいロビー組織J STREETの活動
立山 良司
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2015 年 2 巻 p. 103-121

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Translated Abstract

The American Jewish community as a whole still remains very much supportive of Israel’s policies. Most American mainstream Jewish organizations and their leaders have hardly criticized Israel’s position regarding the occupation, settlements, and the peace process. But over the last ten years or so, different views and opinions have become more visible in the American Jewish community, as represented by J Street, a “pro-Israel and pro-peace” lobby. What has brought about this diversification in the American Jewish community over their attitude toward Israel’s policies?

Many opinion surveys indicate that younger American Jews have become more critical of Israel’s policies with regard to the Palestine question and the peace process. This may be attributed to a shift in identity among young American Jews. Older American Jews tend to see Israel as democratic, progressive and peace-seeking, etc. In addition, they perceive Israel as a safe haven for Jews. But younger Jews draw from memories and impressions scene in recent events, such as the First and Second Intifada, and the military confrontations with Palestinian groups based in Gaza, all of which are perceived as morally and politically more complex than the wars Israel fought between 1948 and 1974.

Communities in the Jewish diaspora try to influence the policies of their homeland in order to protect their identity and sets of values. While the American Jewish community is still strongly committed to liberal democratic values, its counterpart in Israel has leaned toward the political right and toward ethno-religious nationalism. The diffusion of identities and sets of values in both communities may bring about further shifts in the relations between the two communities.

はじめに

「少なくとも米国の主要なメディアで米国の外交政策に対する(イスラエル)ロビーの影響を述べると、ほとんどの場合、反ユダヤ主義的あるいは自己嫌悪的なユダヤ人と非難される」――ジョン・ミアシャイマーとスティーブン・ウォルツは著書『イスラエル・ロビーと米国の外交政策』の序章で、イスラエル・ロビーの影響について語ることの難しさをこう述べている[Mearsheimar and Walt 2007,9]。この本が出版されたのは2007年だが、2人は当時、各方面から称賛される一方で激しく批判・非難された1

しかしこの7年間で、米国の外交政策に対するイスラエル・ロビーの影響を語ることは、たとえ主要なメディアであってもタブーではなくなってきている。2014年2月3日付け『ニューヨーク・タイムズ』は、「最強のロビー団体」と形容されるアメリカ・イスラエル公共問題委員会(The American Israel Public Affairs Committee: AIPAC)の強いロビー活動にもかかわらず、米議会がホワイトハウスの意向を優先しイランに対する追加制裁法案を成立させなかったことを取り上げ、「AIPACはホワイトハウスとの関係で手詰まり状態にある」と報じた[Landler 2014]。

また、ジャーナリストのジェイ・マイケルソンが2014年10月に、米国ユダヤ社会を読者対象とする全国紙『フォワード』に寄稿したAIPAC批判のトーンはいっそう厳しい。マイケルソンによれば、中東和平プロセスでパレスチナ国家を樹立し二国家解決案を実現しようとしないイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権はイスラエルの長期的な利益に反するものであり、そのネタニヤフ政権を支持し続けるAIPACもまた「反イスラエル的だ」と論じている[Michaelson 2014]。

このように米国の主要なメディアでも、最近はかなり頻繁にイスラエル・ロビーの影響が議論の的になっている。また、かつて一枚岩とされた米国ユダヤ社会内でも、イスラエルに対する見方が多様化し、場合によっては意見対立も表面化している。何がミアシャイマーとウォルツの述懐とは異なる状況をもたらしたのであろうか。

背景にあるのは、米国ユダヤ社会とイスラエルの関係に大きな変化が生じていることだろう。その変化を具現化しているのが、「親イスラエル、親和平(Pro-Israel, Pro-Peace)」を掲げて 2008年に結成されたJ Streetの活動拡大である。J Streetはロビー団体として法的に登録しており、イスラエル関係ではAIPACについで2番目の法的なロビー団体である。しかし、両者の主張や活動はかなり違っている。J Streetは入植地やエルサレム、米・イスラエル関係、さらにイランの核開発などの問題に関するイスラエル歴代政府の基本的な立場に批判的で、イスラエル政府を批判しないAIPACとは対照的といえる。

J Streetの発足当初、AIPAC関係者はJ Streetの年間活動予算が150万ドル程度と自分たちの組織に比べて極めて小さかったことを知って、「満足気」だったという[Lewis 2008]。しかし発足から5年後の2013年5月には、イスラエル政府関係者がJ Streetを米国政治で主要なプレーヤであり無視できないと評するまでに至っている [Eichner 2013]。実際、J Streetの活動は近年、多くのニュースで取り上げられるようになり、まさに無視できない存在になりつつある。

以下ではJ Streetの活動拡大に表れている米国ユダヤ社会とイスラエルとの関係の変化、およびその背景を、各種の意識調査や論評、報道などに拠って検討する。具体的にはまず第1節で米国ユダヤ社会の人口動態や政治的指向などを概観し、第2節でJ Streetの活動とそれに対する評価を取り上げ、米国ユダヤ社会内でイスラエルに対する見解が多様化していることを示す。それを受けて第3節で、米国ユダヤ社会の若い世代に生じている対イスラエル観の変化とそれがもたらす意味を検討する。

なお米国在住のユダヤ人に関しては、「米国在住ユダヤ教徒」「ユダヤ系米国人」などさまざまな表現があり、このことは「ユダヤ人」をどう定義するかという問題にも関わっている。また第1節の意識調査に示されるように、宗教に拠らずに自らを「ユダヤ」と自己規定する者もいる。このため本稿では、煩雑さを避けるために統一的に「米国ユダヤ人」と表現する。

1. 米国におけるユダヤ社会

(1) 米国のユダヤ人人口

米国には何人のユダヤ人が住んでいるのだろうか。もちろん、ユダヤ人人口はユダヤ人の定義によるし、米国の公式人口統計は宗教別の人口を示していないため、推定によるしかない。最近ではブランダイス大学のシュタインハーツ社会研究所(Steinhardt Social Research Institute: SSRI)が2013年9月に、2012時点でのユダヤ人の人口構成などに関する調査結果の詳細な報告を出している[Tighe et al. 2013]。また、ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center: Pew)も2013年2月から6月に行った調査結果を同年10月に発表している[Pew Research Center 2013]。

SSRIの調査によると(表1)、宗教によって自らを「ユダヤ」と規定している成人が421万人、宗教以外の何らかの基準で自らを「ユダヤ」としている成人が97万人であり、同調査はこの合計518万人を「中核的なユダヤ人(Core Jews)」としている。さらに「中核的なユダヤ人」のうち、宗教で自らを「ユダヤ」と規定している成人の子供が133万人、何らかの基準で自らを「ユダヤ」と規定している成人の子供が31万人で、総計では681万人のユダヤ人がいると推定している。

表1. SSRIの調査による米国ユダヤ人人口(2012年、単位:人)

(出所)[Tighe et al. 2013].

表2. Pewの調査による米国ユダヤ人人口(2013年)

(注)四捨五入のため合計は必ずしも一致しない。

(出所)[Pew Research Center 2013].

一方、Pewの調査では(表2)、宗教で自らを「ユダヤ」と規定している成人が420万人、非宗教的ないし文化的な理由で「ユダヤ」と規定している成人2が120万人であり、狭義の成人ユダヤ人の人口は合計で530万人(四捨五入のため合計は一致しない)、全人口の2.2パーセントと推定している。またこの調査は、キリスト教などユダヤ教以外の宗教を信じているか、あるいはまったく無宗教だが、母親がユダヤ人など「ユダヤ」としての背景を持っている成人が240万人、さらに「ユダヤ」と自己規定していないが「ユダヤ」と何らかの繋がりがあると考えている成人が120万人いると推定しており、ユダヤ人の定義を広く解釈すれば、成人だけで900万人近くに達するとしている。また、自らを「ユダヤ」と規定している成人の子供は180万人で、「ユダヤ」と自己規定している成人とその子供の合計は710万人になる。

約50年前の1960年時点における米国のユダヤ人口は推定553万人であり[American Jewish Committee 1961, 63]、定義にもよるが一般的な意味でのユダヤ人人口はSSRI、Pewいずれの調査でもこの50年間で100万人以上増えている。しかし全米人口はそれ以上のペースで増加しており、ユダヤ人の全人口に占める割合は1960年推定の3.1パーセント[American Jewish Committee 1961, 63]から減少している。他方、2014年5月現在のイスラエルのユダヤ人人口は614万人であり、SSRI、Pewいずれの推定でも米国在住のユダヤ人人口のほうが多い。

SSRIのデータによると、成人ユダヤ人の70パーセント以上はニューヨーク、カリフォルニア、フロリダ、ニュージャージーなど8州に集中して住んでいる。またニューヨーク、ニュージャージー、マサチューセッツ、メリーランド、フロリダの各州ではそれぞれの州の成人人口に占める成人ユダヤ人人口は3パーセントを超えている。市・地域で見ると、ニューヨーク市が全米の成人ユダヤ人全体の13.3パーセントと最も集中の度合いが高い。次いで南カリフォルニア8.6パーセント、ロサンゼルス地域7.7パーセント、ニューヨーク郊外7.1パーセントとなっている。

Pewの調査による宗派別の割合を見ると、改革派が35パーセントと最も多く、次いで保守派18パーセント、正統派10パーセントの順になっており、ほとんどが正統派であるイスラエルと大きな対照をなしている。また30パーセントはどの宗派にも属していないと答えている。

Pewの調査はユダヤ人と一般米国人の世帯当たりの所得も比較している。それによると、所得が10万ドルを超える世帯の割合は一般米国人の場合18パーセントであるのに対し、ユダヤ人の場合には42パーセントと半数近くに上っている。他方、所得が5万ドル未満の割合は一般米国人56パーセントと半分以上に対し、ユダヤ人の場合は31パーセントに留まっている。米国ユダヤ人は一般的にみて高所得世帯が多いといえるだろう。

(2) ユダヤ人の政治傾向

米国ユダヤ人は一般的にリベラルで民主党支持の傾向が強いといわれるが、各種の世論調査や投票行動もこの傾向を示している。Pewの調査によれば、自らを「ユダヤ」と規定している成人のうち、70パーセントは民主党支持で、共和党支持は23パーセントでしかない(表3)。さらにその中でも、宗教以外で「ユダヤ」と自己規定している成人の場合、民主党支持は78パーセントと増え、共和党支持は12パーセントにまで減少する。一方、宗派別にみると、正統派の共和党支持は57パーセントと半数を超え民主党支持を上回っているが(超正統派もほぼ同じ傾向)、保守派、改革派の順で民主党支持が増大し、「宗派なし」では共和党支持は15パーセントに留まっている。前節でみたように、米国ユダヤ人の83パーセントは改革派や保守派、あるいは「宗派なし」であり、全体として民主党支持が多いことと合致している。

表3 宗教と支持政党の関係(単位:%)

(出所)[Pew Research Center 2013]

アメリカ・ユダヤ委員会(American Jewish Committee: AJC)がやはり2013年10月に発表した調査によると、政党支持率はPewの調査と若干異なり、民主党52%、共和党15パーセント、無党派32パーセントとなっている[American Jewish Committee 2013]。またこの調査によると、自らを「リベラル」ないし「リベラル寄り」とした回答者が合計47パーセントで、「保守」「保守寄り」の合計20パーセントを大きく上回っている。その意味でAJCの調査も、米国ユダヤ人の多くがリベラルな政治指向を持ち、民主党を支持していることを示唆している。

リベラルで民主党支持という政治傾向は大統領選挙にも鮮明に示されている。1970年代以降のほとんどの大統領選挙で民主党の歴代候補はユダヤ票の70パーセント前後を得票しており、共和党候補の得票率20~30パーセントを大きく上回っている[Mellman et al. 2012, 5]。

2. J STREETの登場と活動

(1) 「逸脱した存在」から「主要な組織」に

J Streetは2008年4月に発足した。J Streetの特徴はAIPACと同様、法的にロビー団体として登録しているとともに、その傘下に政治活動委員会(Political Action Committee: PAC)としての法的資格を持つJ Street PACを有していることである。つまりJ StreetはPACを通じて各種選挙の候補者に選挙資金などを献金できる。この点は政治資金を直接献金できないAIPACと異なっている3。このほかやはり傘下には、大学のキャンパスを拠点とした学生組織のJ Street Uなどを擁している。

J Street創設について、創設者であり会長のジェレミ・ベンアミは「米国ユダヤ社会の多数派はあまりにも長い間、沈黙しすぎていた。このため彼ら多数派の政治的な意見は、ユダヤ社会全体を代表していると主張する右派の声にかき消されていた」と述べている。さらにワシントンDCの東西の通りはアルファベット順にAからWまでの名称がつけられているのにJだけがない点に言及し、「私が米国ユダヤ社会の『情熱的な穏健派』と呼ぶ人々の声は、(J通りがないことと同様に)ワシントンで無視されてきた。だから私たちはJ Streetを創設した」と、創設の動機と名称の由来を説明している[Ben-Ami 2011, 106]4

だがすでに述べたように、登場したばかりのJ Streetに対する評価は小さく、場合によっては反感を持たれた。ジャーナリストのジェイムズ・カーチックは結成直後のJ Streetについて、「AIPACやその他の同様な団体が米国ユダヤ人多数派のためすでに発言をしている。また、J Streetの創始者たちはユダヤ社会主流派の意見を代表していない。それ故、(J Streetという)新しい組織が実際に何を達成しようと願っているのか、まったくわからない」と極めて懐疑的なコメントをしている[Kirchich 2008]。こうした話は枚挙にいとまがない。当時の駐米イスラエル大使ミハエル・オーレンは2009年12月に、「J Streetはイスラエルのひとつの政権のひとつの政策に反対しているだけでなく、イスラエルのすべての政権のすべての政策に反対しており、主流派から完全に逸脱している」と述べ、J Streetを「問題児」と評した[Nathan-Kazis 2009]。

しかし過去6年間の活動を見ると、カーチックの見方を含め当初の評価がいかに過小で的を射ていなかったかがわかる。J Streetの諮問委員会メンバーの一人ダン・フレシュラーは、J Streetが発足から1年足らずで10万人近いオンライン支持者を擁し、かつ親イスラエルPACとしては最高の50万ドル以上の政治献金の資金集めに成功したと述べている[Fleshler 2009, 4]。実際、J Street PACによる上下両院立候補者への政治献金は、発足当初の2008年選挙サイクルの約40万ドルから、2014年選挙サイクルでは147万ドルと3.7倍も増えている[OpenSecrets.org]。また2010年選挙ではJ Streetからの支援を受け入れない民主党候補者がいたが[Zengerle 2013]、2014年選挙では80人の民主党候補者に加え、2人の共和党候補者がJ Streetの献金を受けている[OpenSecrets.org]。

また2013年9月末から10月初めにかけてワシントンで開催された年次総会では、ジョー・バイデン副大統領やナンシー・ペロシ民主党下院院内総務などが演説した。イスラエルからも、ツィプ・リブニ法相(中道政党「ハトゥヌア」党首)のほか、与党の右派政党リクードや宗教政党シャスの代表も出席した。さらに2008年にはJ Streetを「問題児」と評した駐米イスラエル大使オーレンもこの大会に出席している。この年次総会を伝えた『エルサレム・リポート』誌は、「J Streetは米国ユダヤ社会において政治的な基盤を劇的に拡大した」と論評した[Sieff 2013]。

(2) J Streetの主張とそれに対する批判

J Streetは自らを「親イスラエル、親和平(Pro-Israel, Pro-peace)」と位置付け、その活動の意義をインターネット上のホームページで次のように述べている。

「ユダヤ的かつ民主的な価値へのコミットメントに基づき、J Streetは米国における親イスラエルの意味を再定義している。我々は二国家解決案への広範な支持を獲得することによって、イスラエルをめぐる米国の政治動向を変えつつある。そうすることがイスラエルおよび米国の利益になるからだ。親イスラエルとはイスラエル政府のすべての政策を支持することを意味しない。このことを実証することで、我々はイスラエル国民とイスラエルに対する支持を拡大してきた」

さらにJ Streetはそのホームページに、①イスラエルが安全かつ平和に生存し、自衛の権利を持つことを支持、②イスラエルの将来は二国家解決案の実現に依拠、③パレスチナ紛争解決のためには、真剣で継続的な米国のリーダーシップが必要、④イスラエルの政策や行動がイスラエルおよびユダヤ人の長期的な利益に反する場合、イスラエル支持者は発言する権利と義務を持つ――など6項目からなる基本原則を掲げている。こうした立場からJ Streetは、イスラエル政府の入植政策や占領政策、さらに過剰な軍事力の行使、人権侵害などの問題で、イスラエル政府を繰り返し批判している。

米国ユダヤ社会の主流派組織や指導者は従来から、パレスチナ問題や占領政策に関しイスラエル政府を公然と批判しないという姿勢を貫いてきた。彼らにすれば、イスラエル政府の政策を公然と批判することは、イスラエルの敵を利することになるのである。それ故、イスラエルを批判する者は米国ユダヤ社会内で活動することが困難になり、さらにはつまはじきに遭ってきた[Mearsheimar and Walt 2007,123-125]。またD.フレシュラーによれば、米国ユダヤ人の多くもAIPACの神話化された政治的影響力を含め、誇張された「ユダヤ・パワー」を信じ込んでいる。そのため彼らの間にも、パレスチナ問題などで発言しても何も変わらないという思い込みがあるという[Fleshler 2009, 14-16]。

それだけにJ Streetのイスラエル批判は米国ユダヤ社会で大きな波紋を呼んだ。例えば2008年末から2009年初めにかけて行われたイスラエルによるガザ地区への軍事攻撃(いわゆるガザ戦争)に対し、J Streetはイスラエルに批判的な立場をとった。イスラエル軍によるガザへの空爆が始まった直後、J Streetはイスラエルの自衛権を認める一方で、「一部の住民による過激な行動を理由に、それ以前から大いに苦しんでいる150万人のガザ住民を処罰する権利はない」との声明を発表した [J Street Blog 2008]。これに対し米国ユダヤ社会から多くの批判の声が上がった。批判者には改革派ユダヤ教のラビでJ Streetの支持者だったエリック・ヨッフィも含まれており、彼はJ Streetの声明を「道徳的に不完全で、ユダヤ人の感情から全くかけ離れている上、驚くほどナイーブだ」と批判した。J Street会長のベンアミはこれに反論し、ガザ攻撃に関し多くのイスラエル人ジャーナリストや退役将校、安全保障専門家が同様の問題を提起していることを挙げ、「彼らの見解も(我々と同様)ナイーブで道徳的に不完全だというのか」と述べている [Fingerhut 2009]。

イランの核開発問題に対しJ Streetがとっている立場も、AIPACに代表される米国ユダヤ社会主流派の立場とは異なっている。AIPACはよく知られているように、イスラエルによる対イラン軍事攻撃という選択肢を支持し、さらにイランへの追加制裁を実現するよう米議会に強く働き掛けている。一方、J Streetは軍事攻撃と追加制裁には反対の立場をとり、そうした立場を繰り返し表明している。またイランで2013年8月に改革派と目されるハサン・ロウハーニーが大統領に就任した際、131人の米議会議員が新大統領の就任を機に核問題に関する外交的努力を続けるべきだとの書簡をオバマ大統領に出した。米議会がこの書簡を出した背景には、J Streetのロビー活動があったと報じられている[Kampeas 2013]。

パレスチナ問題やイランの核問題に対するJ Streetの取り組みは、米国ユダヤ社会の主流派、特に保守派を苛立たせているようだ。例えば米国シオニスト機構(Zionist Organization of America: ZOA)は2013年4月、ホームページに「イスラエルに敵対する側に立つJ Street」というかなり長文の文書を掲載した。その最後は「本レポートが示しているように、J Streetはイスラエルを支持する者よりも、むしろイスラエルに敵対的な者、特に反イスラエル的なアラブ人やイスラーム教徒と緊密に提携している」と結んでいる [Klein and Mandel 2013]。

(3) 多様化する米国ユダヤ社会の意見

先に述べたようにJ Streetは6項目の基本原則を掲げているが、その5番目は「イスラエルに関する活発な議論は、米国ユダヤ社会とイスラエルにとって有益である」としている。J Streetに対する批判や議論は、皮肉にもJ Streetが主張する「イスラエルに関する活発な議論」を実現してしまった。それどころかここ数年、かつてタブーとされたイスラエルの政策についての議論や批判が米国ユダヤ社会内で公然と行われ、さらに主流派のユダヤ団体の間でも立場の違いが表面化するケースが出てきている。

例えば2012年7月には著名な米国ユダヤ人40人以上が、入植地を合法とした法律家委員会の報告書を受け入れないよう求める公開書簡をイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフに送った。この書簡は米国ユダヤ組織「イスラエル政策フォーラム(Israel Policy Forum: IPF)」のイニシャティブによるもので、署名者には元AIPAC議長のトム・ダインや元ユダヤ機関議長リチャード・パールストーンなど主流派の重鎮が含まれていた[Shalev 2012]5

またイラン核問題に関し2013年10月、オバマ政権は米主要ユダヤ団体に対し、対イラン追加制裁法制定に向けたロビー活動を控えるように要請した。これに対し反誹謗同盟(Anti-Defamation League: ADL)は要請を受け入れ活動を停止したが、AIPACとAJCは米議会に対するロビー活動を継続した。このニュースを伝えた『フォワード』紙は「イラン問題に関する主要ユダヤ団体の足並みに、かつて見られなかったような亀裂が生じた」と評した[Guttman 2013]。さらに追加制裁法制定に向けたAIPACのかなり強引ともいえるロビー活動は、民主党支持のための組織「全米ユダヤ民主党評議会(National Jewish Democratic Council: NJDC)」からも反発を招き、専務理事のジャック・モリンはAIPACの働きかけを「力ずくの戦略」と批判した[Kampeas 2014b]。

結局、AIPACの強い働きかけにもかかわらず、議会は追加制裁法を成立させなかった。AIPACのロビー活動が奏功しなかったことについて、米議会内部からも米国ユダヤ社会内の立場や見解が多様化していることが指摘されている。例えば下院議員ピーター・ウェルチ(民主党、バーモント州選出)は「米国ユダヤ社会内の議論が、より複雑になっている」と述べている[Landler 2014]。また自身がユダヤ系の下院議員ジョン・ヤーマス(民主党、ケンタッキー州選出)は「イスラエルやパレスチナなど中東に関する問題で、米国ユダヤ社会の意見にはよりニュアンスが出てきている」と評し、「J Streetはこの多様性を反映している」と述べている[Kampeas 2014a]。

3. 若い世代の意識の変化

(1) イスラエルに批判的な若い世代

イスラエルや中東の問題に関し一枚岩を誇っていた米国ユダヤ社会が何故、この10年ほどの間で多様化し、かつ意見の相違が外部にまで出てくるようになったのだろうか。一つの大きな原因として、若い世代の米国ユダヤ人がイスラエルの占領政策などに批判的で、かつそれを公然と口にするようになったことが指摘されている。2003年に米国の世論調査専門家フランク・ランツは、米国ユダヤ人学生が大学内のイスラエル批判に対し、何故それほど強く反発しないのかを探る意識調査を行った。その結果、ユダヤ人学生の傾向として、①イスラエルの立場に疑義をはさむ権利を保持し、かつイスラエルについてのオープンで率直な議論をしたいと考えている、②和平を志向している、③一部はパレスチナ人の苦境に同情している、の3点が確認されたと指摘している[Beinart 2010]。

同様な傾向は他の研究者からも指摘されている。社会学者のロン・ミラーとアーノルド・ダシェフスキーは、若い米国ユダヤ人はイスラエルの占領政策によりに批判的になっており、こうした批判の声が米国ユダヤ社会内の政治地図を変え、J Street登場の基盤を作ったと述べている[Miller and Dashefsky 2010, 159-160]。また、米国ユダヤ社会の研究で著名なアール・ラーブは1999年の段階で、若い米国ユダヤ人は年配の世代に比べ、イスラエルに対する感情的な親近感が希薄で、かつイスラエルとのアイデンティティをそれほど共有していないと指摘している[Raab 1999]。

年齢が上の世代に比べ若い米国ユダヤ人がイスラエルにより距離を置き、時に批判的な見方をしていることは、他の調査結果にも示されている。米国ユダヤ人の友愛組織「ワークメンズ・サークル」は2012年に「対イスラエル信頼指数(Trust in Israel Index)」という調査結果を発表している[The Workman’s Circle 2012]。調査は正統派ではないユダヤ人1000人を対象に、①パレスチナ自治政府は実際には和平を望んでいない、②イスラエルは真に和平を望んでいる、③米国はパレスチナ側ないし双方を公平に支持するのではなくイスラエルを支持すべきだ、という三つの命題について質問をし、それぞれの問いに対する最も肯定的な回答には33.3点を、最も否定的な回答には0点を配分した。それを集計したものが「対イスラエル信頼指数」で、イスラエルの主張に近ければ近いほど指数が高くなる。信頼指数を世代別にみた場合、35歳未満は57で、55~64歳の70、65歳以上の78に比べ明らかに低く、年齢が下がるにつれてイスラエルの主張をそのまま受け入れる者の割合は減少している。

ブランダイス大学コーエン現代ユダヤ研究センターは2010年5月末のガザ支援船団事件直後に、約1200人の米国ユダヤ人を対象に事件に関する意識調査を行った[Sasson et al. 2010, 14-15]。ガザ支援船団事件とは、封鎖中のガザに向かったトルコのNGOなどによる支援船団が、イスラエル海軍によって強制的に停船・曳航された事件で、乗船していたトルコ人活動家10人が死亡した。意識調査は、①イスラエルの立場:事件は国際的な扇動行為であり、イスラエル兵士はテロ組織ハマースへ武器が渡ることを阻止するために乗船、その際、イスラエル兵士は攻撃され自衛手段をとった、②トルコの立場: 事件はイスラエルによる国際法違反の結果であり、イスラエル兵士は人道支援物資を運搬中の船に乗り込み、一般市民を理由なく攻撃した――の両方の立場を示し、どちらに同意するかを問うたものである。結果はトルコの立場を支持する者の割合はどの世代でも少なかった。しかし、18~29歳の若い世代では、イスラエルの立場に同意する回答者が51パーセントいた一方で、どちらの立場にも同意しない中間的な見方をする者も40パーセントいた。逆に年齢が上がるにしたがってイスラエルの立場に同意する者の割合が増え、60歳以上では80パーセント以上に達していた。

(2) 世代間の差の背景

このように各種の意識調査結果は、米国ユダヤ社会では若い世代ほどイスラエルの占領政策やパレスチナ問題への取り組みに対し批判的な見方が多いことを示している。では何故若い世代ほどイスラエルに対し批判的になるのだろうか。この点に関し広範な議論がなされているが、その多くは若い米国ユダヤ人が持つアイデンティティとイスラエルの政策との間に乖離が生じていることを指摘している。

例えば社会学者のスティーブン・コーエンらによれば、年齢層の上のユダヤ人はイスラエルを革新的、寛容、平和志向、民主的と見ているのに対し、若い世代は第1および第2次レバノン戦争、さらに第1および2次インティファーダなどに基づいてイスラエルについての印象や記憶を構築している。この結果、若い世代のイスラエルに対する愛着は年配世代ほど明確ではないという[Cohen and Kelman 2007, 2-3]。コーエンは別の論考でも若い米国ユダヤ人がイスラエルを批判的に見ていることを取り上げ、40歳以下の場合「親イスラエル」と見られることを嫌がることが多いと指摘している。コーエンによれば、若いユダヤ人にとって「親イスラエル」とは、イスラエル政府の誤った方向性や勘違い、さらに時に非道徳的な政策を支持していることを意味しているという[Cohen 2010]。

世代が若い米国ユダヤ人の間で対イスラエル観が変化していることは、彼らの安全に対する考え方が旧い世代と異なっていることにも起因しているようだ。ホロコーストの記憶が鮮明な旧い世代の米国ユダヤ人から見れば、米国でも反ユダヤ主義の嵐が吹き荒れるような事態が起きるかもしれず、イスラエルはそうした時の「最後の逃げ場」を意味している。しかしハイム・マルカによれば、若い世代にとって彼らが住む米国社会はきわめて安全であり、それ故に彼らは「最後の逃げ場」としての重要性をイスラエルに見出していない[Malka 2011, 42-43]。

自身が若い世代に属し、活発にイスラエル批判の論調を展開しているピーター・ベイナートも同様な議論をしている。旧い代は迫害された物語を強調する。しかしベイナートによれば、若い米国ユダヤ人にとってユダヤ人の力は自明であり、「ユダヤ人は犠牲者である」という言説は彼らが中東で目にしている現実、つまり占領地においてユダヤ人は市民権を享受できるが、非ユダヤ人は享受できないという状況と相いれないのである[Beinart 2012, 6-7]。

2014年7~8月にかけて、イスラエルとガザ地区を拠点とするハマースなどパレスチナ側武装勢力間で50日にわたる軍事衝突が発生した。パレスチナ側は4500発以上のロケットや迫撃砲をイスラエルに向け発射し、イスラエルの3分の2が射程距離圏に入った。イスラエル軍による攻撃も地上部隊の投入を含め徹底的で、パレスチナ側の犠牲者は2140人に上り、米国内でもイスラエルを批判する論評やデモがあった。意識調査でも、イスラエルの攻撃を「正当化できる」とした米国人一般は42パーセントで、「正当化できない」の39パーセントとほぼ拮抗していた[Gallup 2014]。一方、米国ユダヤ人を対象とした調査では、イスラエル軍の攻撃を「支持する」との回答が80パーセントと極めて高く、米国人一般との見方の違いが明確になった[GBA Strategies 2014]。しかし、ユダヤ人対象の調査結果を年代層別にみると、40歳未満では29パーセントが「支持しない」と回答しており、40歳以上の18パーセントと攻撃の受け止め方にはっきりとした差がある。

年代層による意見の相違は、シナゴーグでの説教のテーマの選択にも変化をもたらしたという。例年、9~10月にかけては、ユダヤ暦の新年など多くの宗教行事が集中し、ユダヤ人がシナゴーグに集まりラビの説教を聞く機会が多い。米国のシナゴーグでも以前はイスラエルが話題の中心だった。ところがガザとの軍事衝突直後の2014年秋には、多くのラビがイスラエルをテーマに説教をすることを避けたという。『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、イスラエルは話題としてあまりにもホットで、もし説教でイスラエルを擁護すれば若いユダヤ人をいっそうシナゴーグから遠ざけることになる。他方、イスラエルに批判的なことを話すと、シナゴーグに多額の献金をしボランティアとして協力してきた年配のユダヤ人を怒らせることになるためだという[Goodstein 2014]。

イスラエルへの見方をめぐり米国ユダヤ社会内に亀裂が生じている状況を、『ハアレツ』紙も伝えている。それによれば、「かつて統合の原動力だったイスラエルは、今や北米ユダヤ社会にとって分裂、厄介者、不快な話題であり、イスラエルについて語ると言い争いになるため、誰も話題にしない」という[Sommer 2014]。

終わりに

現在のイスラエルにどう向き合っていくかに関し、米国ユダヤ社会における意見の違いはいっそう多様化し拡大しているようだ。2014年後半、イスラエル政治で最も大きなイシューの一つになったのが「基本法:ユダヤ民族国家」という新しい基本法6を制定しようとする動きだった。法案は2011年に国会(クネセト)に提出された。イスラエルをユダヤ人の民族国家であると規定するものだが、民主主義や平等の原則を法案に盛り込むか否か、盛り込むとすればどのような規定にするかについて、異なる案が出されるなど2014年秋以降、大きな政治的イシューとなった[Gur 2014]。イスラエル連立政権内でも意見が対立し、2014年12月の国会解散の直接の契機となった。

同法案は米国ユダヤ社会でも大きな波紋を引き起こし、ADLやAJC、ユダヤ公共問題評議会(Jewish Council for Public Affairs: JCPA)など主要なユダヤ団体がイスラエルの民主主義の原則を危うくするとの批判声明を出すなどした。一方、ZOAは法案支持を表明し、主要な米ユダヤ団体の間にも立場の相違があることを明確にした[Zionist Organization of America 2014]。

ピーター・ベイナートは別の視点から、主要ユダヤ団体の法案批判を批判している。彼によれば、法案がイスラエル国籍を持つパレスチナ・アラブ人の権利を脅かすことになるという理由で反対するのであれば、西岸で何百万人ものパレスチナ人が市民権を有していない状態を47年間も続けていることをこそ問題にすべきだ。にもかかわらず、西岸のことになると主要ユダヤ団体は「安全保障」問題として口をつぐんでしまう、とベイナートは批判している[Beinart 2014]。

ユダヤ民族国家法案をめぐる一連の議論はイスラエルと米国のユダヤ人社会の両方で、国家としてのイスラエルのあり様をめぐり見解や主張に相違や亀裂が生じ、それが顕在化していることを物語っている。かつてであれば「ユダヤ国家」と民主主義の両立は自明のことと受け止められていたか、あるいはそう信じられていた。しかし、中東和平プロセスの破綻と占領の長期化、人口動態の変化と宗教ナショナリズムの台頭、国際社会での孤立などを背景にイスラエル社会の右傾化が顕著になるにつれ、国家のアイデンティティをめぐる対立が生じてきている[立山 2012]。さらにJ Streetの登場と活動の拡大に象徴される米国ユダヤ社会における対イスラエル観の変化や多様化が、以前はタブーだったイスラエルに関する公然とした議論を可能にしている。

ディアスポラ状態にあるエスニック集団が母国の政治動向に強い関心を持ち、自国政府へのロビー活動、あるいは母国政府や社会へ働きかけることで、何らかの影響力を行使しようとするのは何故だろうか。この問題を分析したヨシ・シャインとアハロン・バースはコンストラクティビズム7の視点から、ディアスポラ集団は自らのアイデンティティを守るという利益のためにロビー活動や働きかけを行うと論じている。外にいる集団は自分たちの民族アイデンティティを守ることをより重視し、そのため母国の政策が自分たちのアイデンティティとその根幹にある価値観に合致するよう働きかけるからだ[Shain and Barth 2003]。米国ユダヤ人の多くはリベラルで多元的な民主主義の価値を重視してきた。マイノリティとしての自分たちのアイデンティティを守るために当然だった。またそのことをイスラエルにも期待してきた。しかし、ユダヤ民族国家法案をめぐる議論はイスラエルと米国の両方のユダヤ社会において、「ユダヤ」のアイデンティティに関する立場が錯綜し収斂できないという現実を物語っている。

であるならば米国とイスラエルの二つのユダヤ社会の関係は今後さらに変化すると考えるのが自然だろう。その意味でセオドア・サッソンの次の指摘は十分にうなずける。彼によれば、平等と社会的正義を重んじる米国ユダヤ社会と、民族主義的、宗教的傾向を強めているイスラエルのユダヤ社会はますます異なった方向に歩んでおり、両者の緊張関係は今後も続く。加えて入植地やエルサレム、さらに正統派ユダヤ教の優位性などの問題をめぐり、両社会はいっそう多様化している。その結果、米国ユダヤ組織の間で統一戦線を作り出そうとするイスラエル・ロビーの動員力は弱まるだろう、とサッソンは予測している [Sasson 2014, Chap.6]。

こうした米国とイスラエルの二つのユダヤ社会の関係の変化が、米国・イスラエル間の「特別な関係」にどう影響するかは、今後検討されるべき大きな課題である。しかしながら、両国の関係は、単にイスラエル・ロビーや米国ユダヤ社会の動向によってのみ規定されているのではない。ユダヤ・キリスト教の伝統や増大する福音派キリスト教徒、さらにキリスト教シオニズムの存在など、米国の外交政策に強い影響力を持っている米国キリスト教社会の動向や、対ミサイル防衛システムの開発に代表される軍事・安全保障面でのつながりなど多くの要因を検討する必要がある。しかし本稿で検討したように、米国ユダヤ社会の若い世代を中心に対イスラエル観に大きな変化が生じ、それが二つのユダヤ社会の関係にインパクトを与えていることもまた確かである。

本文の注
1  The Israel Lobby and U.S. Foreign Policyのオリジナル版は2006年3月にハーバード大学ジョン・F・ケネディー・スクールのウェッブサイトにワーキングペーパーとして掲載され[Mearsheimar and Walt 2006]、さらに同じ月にやや短いバージョンがLondon Review of Books (Vol.28, No.6)に掲載された。ただし本稿で引用した個所はオリジナル版にはない。

2  「非宗教的ダヤとして育てられたかあるいはユダヤの両親を持っており、かつ自らを宗教外でユダヤと考えないし文化的」に「ユダヤ」であることについて、Pewの報告書は「宗教は持っていないが、ユている人々」と規定している[Pew Research Center 2013, 23]。

3  AIPACはその名称のために時に誤解されるが、政治献金をするために組織された政治活動委員会(PAC)ではない。イスラエル・ロビーないしユダヤ系組織からの政治献金という場合、個人や団体が結成した数百に上るといわれるPACによってなされている。

4  なおワシントンDCのKストリートはロビイストの事務所が集中していることで知られている。

5  IPFは2013年4月にも100人の著名ユダヤ人が署名した公開書簡をネタニヤフ首相に送り、二国家解決案を実現するために「痛みの多い領土的妥協をする」よう呼びかけている[Shalev 2013]。

6  イスラエルは制定憲法を有しておらず、その代替として議会(クネセト)が可決した基本法がある。現在、大統領、政府、イスラエル国防軍、エルサレムなど12の基本法があり、通常の憲法の各章の役割を果たしている。

7  コンストラクティビズム(構成主義)は国際関係論の理論的立場の一つ。国際社会(構造)と主体との間の相互作用を重視し、主体のアイデンティティと利益も相互作用を通じて構成されると説く。

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