抄録
本稿の目的は,小学校3年生が質的データの分布をどのように捉えているかについての実態を明らかにすることで,小学校における統計指導への示唆を得ることである。方法は,棒グラフの単元を学習し終えた小学校3年生を対象に,質的データの棒グラフから分布を推測する課題を用いた質問紙調査を行い,分析した。その結果,質的データにおける分布の要素を複数見出すことは,殆どの児童ができるが,それらを関連づけられる児童と関連づけられない児童にほぼ二分されるという実態が明らかとなった。さらに,児童の実態改善に向けた小学校における統計指導として,以下の2点を提案した:①小学校第3学年の棒グラフの指導の中に現行の算数科教科書の問いを活かして分布の全体的な特徴までよみとる活動を位置づけるアプローチ,②高学年の指導の中にも分布の全体的な特徴をよみとる活動をスパイラルに位置づけるアプローチ。