衛生動物
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床面に分布するダニの研究 : I. 夏期各種学校で採集したダニについて
大島 司郎
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1964 年 15 巻 4 号 p. 233-244

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抄録

1.公立小学校, 中学校, 高等学校および私立女子学校計9校の夏期における床面に分布するダニを調べるため, 電気掃除器で採集した塵からクロロホルム又は四塩化炭素とエチルエーテルの混合液を用いた浮游法で3亜目29科6, 766個体のダニを330.8gの塵から採集した.塵1g中の総ダニ数は平均20.5であり, 生存ダニ数は13.5であつた.2.校種別に見ると, 塵1g中のダニ個体数は女子校66.6, 高校7.9, 小学校4.5, 中学校1.9である.これにつき5%の危険率で検定したところ, 女子校は他3校より多いが, 高校は小・中学校より多いとはいえない.小学校は中学校より多い.また同一校種の学校間には有意の差はない.種類は高校がもつとも多く, 小学校, 中学校女子校の順であつた.D. farinaeの繁殖の顕著なほどWMI, 生存ダニの占める比率, Acaridiaeの比率が高く, その順は女子校, 高校, 小学校, 中学校である.3.ダニの密度の高い教室は小, 中学校では特殊学級であり, 女子校では裁縫室であった.4.Dermatophagoides farinae Hughes, 1961およびD. scheremetewski Bogdanow, 1864 (Epidermoptidae)が全ダニの個体数の89.9%採集され, 両種は床面のダニの優占種である.未熟stage, 成虫の組成および両種の棲み分けにつきその傾向を考察し, さらにその衛生的重要性をのべた.5.イエダニ等のDermatophagoides spp.以外のダニの出現率をのべた.6.ダニ以外の匍匐性小動物の出現率をしらべた.7.虫咬症に関してアンケートの結果と床面から採集したダニとの関連性を考察した.8.自由生活性ダニに対して, 床面はその無機的, 有機的環境因子が整い棲息可能であること, およびDermatophagoides等にとつては固有生活環境になつていると考えられた.9.屋内性ダニと人体内ダニ症との関連性につき考察した.10.ダニのpopulationの差とその原因につき考察した.

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© 1964 日本衛生動物学会
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