衛生動物
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Dieldrin に抵抗性ならびに感受性の Culex pipiens 幼虫コロニーの分離
鈴木 猛水谷 澄海野 登久子松永 秀子
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1964 年 15 巻 4 号 p. 267-272

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抄録
1.野外採集ないし実験室内飼育中のアカイエカCulex pipiens s. l. 幼虫7集団を用い, dieldrinに抵抗性ないし感受性のコロニーの分離をこころみた.2.感受性コロニーの分離においては1卵塊から3〜4令まで飼育した幼虫の一部を用い特定のdiscriminating dosage(多くの場合に0.02ppm)でテストを行ない, 高死亡率を示す幼虫群の残部をプールして次代を得, 同様の手法をくりかえして感受性のコロニーを得た.抵抗性のコロニーの分離では, 上記と同様な手法で, 特定の濃度(多くの場合に0.3ppm)で低死亡率の残部をプールして次代を得, これをくりかえした.また, 常法によりdieldrinのpressureをかけた淘汰をも併用した.3.その結果, 一部には継代飼育に失敗したコロニーもあり, その多くは, 産卵率とふ化率が分離の過程で低下したためであつた.一方, RR分離では, 古仁屋, 古市場, 伝研, 川崎; SSの分離では古仁屋, 古市場の各コロニーで成功し, そのld-p lineは, かなりよく直線性を示し, また, 鈴木ら(1964)の報告したld-p line testによるRR, SS各コロニーの推定回帰直線とよく一致した.4.こうして得た古市場のSSコロニーを, 0.004ppmのdiscriminating dosageにより更に分離を試みたが, この濃度において, 高死亡率を示した幼虫群と, 低死亡率を示した幼虫群の次代の感受性の間には差がなく, これは遺伝的なものに由来した結果ではなく, 彷徨変異にすぎないことを知つた.すなわち, ここに得たSSコロニーより, 更に感受性の高い集団は存在し得ないことを認めた.5.こうして分離に成功したコロニーのdieldrinに対するLC-50は, RRコロニーではおよそ0.5〜0.8ppm, SSコロニーではおよそ0.004〜0.006ppmであつた.
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© 1964 日本衛生動物学会
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