抄録
チャバネゴキブリのディルドリン抵抗性について, 遺伝的研究をおこなつた.すなわち, 1匹の♀の1卵鞘から生れた1令幼虫を, ディルドリン浸漬濾紙に継続的に接触させ, そのlt-p lineのプラトーから, 幼虫群の遺伝的構成を推定した.感受性の伝研コロニーと抵抗性の砂子コロニーを交雑したF_1は, 両親の中間的な強さを示した.F_2は抵抗性, 中間系, 感受性の3つに分離し, その比は, 1 : 2 : 1であつた.戻し交雑の結果は, 抵抗性と中間系, あるいは感受性と中間系が, それぞれ1 : 1に分離した.以上の結果から, チャバネゴキブリのディルドリン抵抗性は, 単因子性の遺伝様式を示し, 抵抗性の遺伝子は感受性のそれに対して不完全優性であることを知つた.また, discriminating dosageを利用することにより, 混合集団の神田コロニーから, ディルドリンに抵抗性の純系および感受性の純系を分離することに成功した.なお, この論文は, WHOのVector Biology and Control Series, No.74 (1968)に暫定的に報告したものである.