抄録
1) 新しい有機燐系殺虫剤AbateとDursbanの, 蚊幼虫および成虫に対する殺虫効力について検討し, またさらにdiazinon, malathion, fenitrothion, DDTの各薬剤に対する抵抗性系統および感受性系統の幼虫を用い, 交差抵抗性の有無及びタップミンノー, グッピーに対する毒性について検討した.2) C. p. fatigans, C. p. molestus, C. tritaenior-hynchusの幼虫に対して, Abateはfenthionと同等ないしそれ以上の効力を示し, Dursbanは, Abateよりも数倍程度有効であつた.Aedes aegypti幼虫に対する効力は, 両薬剤とも, 他の種に対するよりもかなり低く, ここに用いた系統の抵抗性について疑問がもたれた.3) Abate, Dursbanともに, diazinon, malathion, fenitrothion, DDTの各薬剤との間に交差抵抗性は認められなかつた.4) 幼虫のテストに, くみたての水道水を用いた場合のLC-50値は, 脱イオン水を用いた場合のLC-50値と比較し, Dursbanではほぼ同じであつたが, Abateでは3倍程度であつた.Abateは, 水道水中の遊離塩素によつて分解されるものと推定された.5) 各殺虫剤8ppmの濃度の稀釈液中に幼虫を放つて, ノックダウンをしらべた結果, KT-50値は, Dursban<fenthion<fenitrothion<Abate<diazinonであつたが, 1ppmのもとでは, fenitrothionとAbateが入れかわり, しかも8ppmとほぼ同じ値を示した.6) 成虫に対してのKT-50値は, Dursban<fenthion<fenitrothion<Abateであり, Abateは24時間後においても5%程度のノックダウン率しか示さなかつた.7) Topical applicationの方法によつて得られたアカイエカ雌成虫のLD-50値は, Abateは0.025〜0.027γでdiazinon, malathionと同程度であり, Dursbanは0.0034〜0.0050γでAbateのさらに1/5〜1/7の値であつた.8) 魚に対する毒性は, Dursbanの方が高くAbateはfenitrothion, fenthionと同程度の毒性を持つものと認められた.