抄録
diazinonに対して抵抗性を異にする混合集団から成るCulex pipiens molestusの幼虫から個別飼育法によつてdiazinon感受性系統(SS)を, また薬剤のpressureを与えた淘汰によつて抵抗性系統(RR)を得た.これらの系統を用いて, 交雑をおこない, それらのld-p lineからdiazinon抵抗性の発現様式の究明をした.1.RR×SSの交雑F1のld-p lineは, RRおよびSSの中間に位置し, RRに近接し, それぞれほぼ平行な直線を示した.2.F1同志を交雑して得たF2のld-p lineは, 死亡率25%と75%の位置にplateauないし変曲点をもつた曲線を形成した.すなわちRR : RS : SSが1 : 2 : 1に分離するという仮説によく一致した.3.F1×RR(P), F1×SS(P)のBack crossのld-p lineは, それぞれ死亡率50%の位置にplateauないし変曲点をもつた曲線を示し, RS : RR=1 : 1あるいは, RS : SS=1 : 1に分離するという仮説によく適合した.4.以上の結果からアカイエカ幼虫のdiazinon抵抗性は, macroscopicな立場をとるかぎり, malathion抵抗性と同様メンデル性の単因子性遺伝様式をとり, 抵抗性の遺伝因子は, 感受性の遺伝因子に対して不完全優性であると考えられた.5.diazinonの0.05〜0.15ppmで, 幼虫をテストすることによつて, その集団のdiazinon抵抗性の構成比, すなわちSS : (RS+RR)の構成比を知ることが出来る.6.diazinon RR, SS, 交雑F1, F2, Back cross系統の幼虫のfenitrothionに対するld-p lineの結果は, diazinonと同様な結果をしめし, diazinon抵抗性とfenitrothion抵抗性とは高い関連にあるものとみなした.