衛生動物
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日本産 genus Prosimulium Roubaud (Diptera : Simuliidae) の再検討 IV : subgenus Helodon Enderlein
上本 騏一岡沢 孝雄
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1980 年 31 巻 3 号 p. 223-230

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抄録

小野(1976)は, 本種(わが国でHelodon亜属に属する唯一の種)をHelodon multicaulis (Popov, 1968)とみなして, その再記載を行った。Prosimulium (Helodon) multicaulis Popov(原記載を通じてのみ知り得る種)は, 幼虫の亜下唇の中央歯が本種より顕著に突きでる点, 雌の外部生殖器を構成する尾葉が本種より細い点, 雄の外部生殖器のventral plateのbasal armが本種より短く, median scleriteの柄も短くて末端の切れ込みが逆V字形である点, また雄の把握器末節が本種より尖っている点などで明瞭に相違する。その他, 小あごの歯の数も変異のわくをこえて多い。これら重要な形質についての差は, 本種をP. (H.) multicaulisとは別の独立種とみなすのに充分な根拠を与えている。そこで本種をProsimulium (Helodon) kamui n. sp.として, 雌成虫, 雄成虫, 蛹および幼虫を記載した。なお, Helodonに対して, ナツオオブユ亜属, また本種に対してハイイロナツオオブユの和名をそれぞれ提唱する。

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© 1980 日本衛生動物学会
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