衛生動物
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グァテマラの人吸血性ブユの研究 : とくに同国南東部流行地におけるオンコセルカ症伝播との関連について
A. J. Onofre OCHOA
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1982 年 33 巻 2 号 p. 129-138

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抄録
グァテマラ国San Vicente Pacaya郡を中心とした南東部のオンコセルカ症流行地における媒介ブユ種を決定し, 伝播時期などを知る目的で, 同流行地内のPena Blancaと, 別の流行地のMonica IvoneおよびSan Rafael Sumatanの3農園において, 周年調査を行った。人おとり法による1年間の採集結果から, Pena BlancaとMonica IvoneではSimulium ochraceum, またSan Rafael SumatanではSimulium metallicumが最優先種であった。捕集された雌成虫の剖検から, オンコセルカ症病原体Onchocerca volvulusの第3期幼虫は, Pena BlancaおよびMonica Ivoneにおいて捕集解剖されたS. ochraceumのおのおの0.33,0.02%に見いだされた。Pena BlancaのS. metallicumとS. callidumからは第1,2期幼虫は見いだされたが, 第3期幼虫は観察されなかった。各月のMIBD (Monthly Infective Biting Density=その月に1人の人が伝播可能なブユに吸血される数)をPena BlancaのS. ochraceumについてみると, 0∿51と変動がみられたが乾期(とくに11∿2月)に高い傾向を示した。各月のMIBDを合計したAIBD (Annual Infective Biting Density=1年間に1人の人が伝播可能なブユに吸血される数)はPena Blancaで221,Monica Ivoneで59と推定された。Simulium ochraceumは従来知られていたように人に対して最も強い吸血嗜好性を示すが, 今回の調査で山羊に対してもかなりの吸血嗜好性を示すことがわかった。以上の結果に考察を加え, グァテマラ南東部におけるオンコセルカ症伝播にはS. ochraceumが最も重要であり, 今後媒介ブユ対策を行う場合は本種を対象とすべきであると結論された。
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© 1982 日本衛生動物学会
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