衛生動物
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ユスリカ科幼虫の水質指標としての有用性について
河合 幸一郎山岸 高由久保 義博小西 健一
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1989 年 40 巻 4 号 p. 269-283

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抄録

採集した幼虫を研究室内で羽化させ, 得られた雄成虫を同定するという方法により, 日本各地の, 種々の有機汚濁段階にある計66の水域のユスリカ幼虫相を調べ, 幼虫の群集構成と水域の有機汚濁の程度(BOD)との相関を吟味した。その結果, 河川のある水域から記録される種数, およびある水域の瀬の群集の種多様度指数H', 均等性要素多様度指数J'は, いずれもその水域のBOD値と有意な負の相関を示した。また, 湖の岸寄りの部分から記録される種数および河川の淵・湖の岸寄り等の止水環境の群集のH'もBODと有意な負の相関を示した。Pentaneura divisa, Brillia japonica等は貧腐水域(0≦BOD<1), Polypedilum pedestre, Paracladopelma camptolabis等は貧腐水域ないしβ中腐水域(0≦BOD<2), Po. japonicumはβ中腐水域ないしα中腐水域(1≦BOD<5)からのみ出現した。Corynoneura lobataは貧腐水性河川の瀬, Tanytarsus tamagotoi, Ta. takahashiiおよびPo. asakawaenseは, それぞれ貧腐水性, β中腐水性(1≦BOD<2)およびα中腐水性(2≦BOD<5)の止水環境においてのみ優占種となった。さらに, α中腐水域の瀬の群集中のCricotopus triannulatusの割合は, 貧腐水域あるいはβ中腐水域における割合に比べて高くなる傾向がみられた。以上のことから, ユスリカ幼虫群集の多様度, ある種の出現や群集における優占および相対豊度は, 水質の生物指標として利用可能であることが示唆された。

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© 1989 日本衛生動物学会
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