1999 年 50 巻 1 号 p. 41-50
オオサシガメRhodnius prolixusの唾液腺や唾液腺構成タンパク質について分析し, これらが吸血前後でどのように変化するかを調べた。また, 吸血によって宿主動物に誘導されるこれらの唾液腺タンパク質に対する抗体価の変動についても調べ, その関連を明らかにした。5齢幼虫と成虫の唾液腺全タンパク質のそれぞれ43%および33%が吸血によって減少していた。個々の唾液腺構成タンパク質についてみると減少が均一ではなく, 特定のタンパク質(23,28,34,39kDa等)が特に減少し, ほとんど減少しないタンパク質のあることが判った。次に, オオサシガメの吸血によって宿主ウサギ血液に誘導される抗体価の変動について検討した。4-7週間隔で3回吸血されたウサギから1週間毎に採血し, 唾液腺タンパク質を抗原としてELISAおよびWestern blottingにより抗体価の変動を調べた。その結果, ほとんどのタンパク質を抗原性を持つが, その強さは一定ではなく, ウサギに対し高い抗体価を誘導するタンパク質(39kDa)がある一方, 全く抗原性を示さないタンパク質(28kDa)があった。また, 抗凝固活性や血管拡張活性のあることがわかっている機能タンパク質はウサギに対し比較的抗原性が低いことが示された。これらの現象の起こる機構と意義について考察した。