1999 年 50 巻 1 号 p. 65-70
富栄養化レベルの異なる湖沼の沿岸帯に設置したコンクリート板の付着物から羽化する雄成虫を同定する方法により, Tanytarsus属ユスリカ種間の出現水域富栄養化レベルの違いを調べた。その結果, 9種についてその出現パターンが明らかになった。これらのうち, T. tamagotoiとT. takahashiiは, ともに全ての富栄養化レベルから出現したが, それぞれ低レベル及び中レベルの水域から最も多く出現した。一方, T. unagiseptimus及びT. oyamaiは高レベルの水域から最も多く出現した。これらの結果は, 沿岸帯底生動物群集中の本属ユスリカの種組成が湖沼の富栄養化段階の生物学的判定に応用可能であることを示唆する。