河口域横断面におけるユスリカ幼虫の分布パターンについて

抄録

底質サンプルから羽化してくる雄成虫を同定する方法により, 広島湾に注ぐ7河川の河口域14定点においてユスリカ幼虫の横断面における分布を調べた。各調査定点で一横断面の3つの異なる高さの位置で底質サンプルを定量採集した。すなわち, 干潮時に水面下にある位置(S), 干潮時に汀線となる位置(Z)及び干潮時に干出する位置(D)で採集した。その結果, 計31種183個体の雄成虫が得られた。これらのうち, Procladius simplicistilus, Rheopelopia eximia, Cricotopus bicinctus, C. bimaculatus, Paratrichocladius rufiventris, Chironomus salinarius, Dicrotendipes enteromorphae, Nilothauma brayi及びTanytarsus yunosecumdusはSからのみ出現し, Chironomus nipponensis, Polypedilum masudai及びStictochironomus pictulusはZからのみ, Cricotopus sylvestris, Paratendipes tamayubai, Polypedilum japonicum, Cladotanytarsus vanderwulpi及びTanytarsus unagiseptimusはDからのみ出現した, 一方, Chironomus kiiensis, C. yoshimatsui及びDicrotendipes flexusは全ての位置から出現した。これらの結果は, 河口域横断面において乾燥や塩分耐性に応じたユスリカ幼虫の棲み分けが存在することを示唆する。