衛生動物
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核酸実験のためのコロモジラミ保存条件の検討
李 時雨三原 實冨田 隆史葛西 真治
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ジャーナル オープンアクセス

2006 年 57 巻 2 号 p. 105-110

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抄録

分子診断に用いるコロモジラミの保存方法を検討した.ピレスロイド系殺虫剤の作用点であるナトリウムチャネルの遺伝子をPCR法により増幅し,その増幅効率によりコロモジラミ体内のゲノムDNAおよびPoly(A)^+RNAの保存性を評価した.総じて,Poly(A)^+RNAよりもゲノムDNAの安定性は高く,その傾向は70%もしくは99.5%エタノール中に虫体を保存した場合も同様であった.コロモジラミを99.5%エタノール中に保存した場合,もしくは餓死させ,無処理のまま室温で保存した場合,ゲノムDNAは少なくとも2ヶ月間は安定的に抽出することができた.その一方で,エーテル処理後に室温で保存したコロモジラミについては,体内のゲノムDNAおよびPoly(A)^+RNAはともに分解傾向が強く認められた.したがって,ゲノム解析に用いる試料においては体内の水分や血液は完全に乾燥もしくは消化される必要があると考察された.

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© 2006 日本衛生動物学会
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