日本組織適合性学会誌
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原著論文
HLA-A欠失によるHLA-A非発現型の発見
林 律子渡辺 嘉久石川 善英柏瀬 貢一山崎 雅子内野 郁世伊村 公良興津 馨浅井 隆善小松 孝良清水 勝則
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2004 年 11 巻 1 号 p. 11-15

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抄録

新生児血小板減少症患者の家系調査で見つかったHLA-A非発現型について解析した. このHLA-A非発現型アリルはPCR-SSP法, PCR-SBT法では検出されなかった. 5′-, 3′-非翻訳領域に設定したHLA-Aローカス特異的プライマーによるPCRでも増幅断片は得られなかった. パルスフィールド電気泳動法によるHLAクラス1領域の解析の結果, 約10kbの欠失が検出された. このHLA-A非発現型はHLA-A遺伝子の一部あるいは全長が欠失していると考えられた. HLAの血清学的タイピングやlow resolutionのDNAタイピングでホモ接合と判定される検体の中には非発現型アリルや低発現型アリルが含まれる可能性がある. WHO HLA命名委員会にはHLA-Aローカスアリルだけですでに18種類の非発現型アリルが登録されており(1), このうちのA*0215N(2), A*2611N(AB005048)は日本人から見つかったアリルである. これら非発現型アリルのほとんどは1塩基置換, あるいは小規模な挿入, 欠失によるものであり, これらの変異が未知の部位に生じた場合は, DNAによるタイピングでは発現型のアリルとして判定されてしまうことが起こりうる.

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© 2004 日本組織適合性学会
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