日本組織適合性学会誌
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最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 福永 航也, 莚田 泰誠
    2025 年32 巻2 号 p. 37-46
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/28
    ジャーナル フリー

    ゲノムワイド関連解析(GWAS)や次世代シークエンシング(NGS)などの網羅的なゲノム解析手法の進歩により,薬剤の反応性の個人差には,ヒト白血球抗原(HLA)や薬物代謝酵素における遺伝子バリアントが関連することが示されつつある。特に薬疹の発症リスクにはHLAアレルが関連していることが多数報告されている。これらのゲノムバイオマーカーを用いて,薬疹の発症リスクが高い患者には適切な薬物治療を提供する精密医療の社会実装が期待されている。筆者らは最近,潰瘍性大腸炎や関節リウマチの治療薬であるサラゾスルファピリジンが誘発する薬疹の発症リスクに独立して関連するHLA-A*11:01HLA-B*39:01およびHLA-B*56:03を同定した。本稿ではサラゾスルファピリジン誘発薬疹に関連するHLAアレルに加えて,それ以外の薬疹に関連するゲノムバイオマーカーに関する知見を概説する。

  • 中土 亜由美, 間 陽子
    2025 年32 巻2 号 p. 47-58
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/28
    ジャーナル フリー

    ウシMHCはBovine leukocyte antigen (BoLA)と呼称され,ウシの23番染色体にマッピングされている。BoLA-DRB3は,BoLAクラスII遺伝子の中で最も多型性が高く,これまでに386種類のアレルが報告されている。この遺伝子座の特定のアレルは,全世界に蔓延し畜産界に甚大なる被害を及ぼしている牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)の感染に伴う地方病性牛伝染性リンパ腫等との強い関連性が報告されている。本総説では,近年明らかになったBLVの水平・垂直感染とBoLA-DRB3との関連性を概説すると同時に,特に,著者らが明らかにしたBoLA-DRB3がウシ乳汁中のBLVプロウイルス量,抗BLV抗体量および感染性に及ぼす影響,およびBoLA-DRB3とBLV感染が複合的に乳汁に関する経済形質に及ぼす影響について紹介する。最後に,BoLA-DRB3に基づくBLV感染個体の乳汁を介した理想的な感染対策を考案したのでこれについても紹介する。

シリーズ
2025年度認定HLA検査技術者講習会テキスト
  • 成瀬 妙子
    2025 年32 巻2 号 p. 80-86
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/28
    ジャーナル フリー

    The written examination conducted by the Certification Committee for HLA Testing Technologists and Histocompatibility Instructors of the Japanese Society for Histocompatibility (JSHI) is intended to improve and maintain the skills and knowledge related to histocompatibility testing in Japan. Every year, a mock exam is held during the annual meeting. At the program, held as an educational lecture at the annual meeting, detailed explanations are provided for the so-called “difficult questions” in the last year’s mock exam-those questions with a low correct answer rate (generally below 40%). This article provides us with the text for that purpose. It would be a great pleasure if this proves helpful not only for beginners and those aiming to obtain certification but also for anyone wishing to review the fundamentals of HLA.

  • 西川 晃平
    2025 年32 巻2 号 p. 87-96
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/28
    ジャーナル フリー

    抗ヒト白血球抗原(HLA)抗体の検出に用いられるシングルアンチゲンビーズ(SAB)検査および高解像度HLAタイピングの発展により,近年仮想クロスマッチは著しい進歩を遂げた。しかしSAB検査の解釈を誤ると,腎移植の適応や成績に大きな影響を及ぼす可能性がある。エプレット解析は免疫源となるエプレットを推定する手法であり,SAB検査の理解を深め,補完し得る有益な方法と考えられる。そこで本稿では,エプレットの基本と臨床での応用法についてエプレット解析を中心に概説する。

  • 芳川 豊史
    2025 年32 巻2 号 p. 97-104
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/28
    ジャーナル フリー

    肺移植は,内科的治療が尽くされても進行する慢性呼吸不全患者に対する最後の砦となる治療で,わが国においても累計で1300例を超え,その生存率は世界最高レベルである。しかしながら,肺は,気道で外界と直接通ずる臓器であり,肺移植において感染と拒絶のバランスを長期に維持することは難しく,他臓器と比べ肺移植の成績は悪い。本邦では,慢性的な脳死ドナー不足の影響を受け,脳死肺移植が待機できない患者に対して,生体肺移植が重要な治療オプションとして行われている。世界的にも,ドナー不足だけでなく,肺移植の成績を改善し,持続可能な移植医療を行うために,様々な取り組みが行われている。今回,本邦における肺移植の現状と今後について,世界の肺移植の歴史と現状に照らしあわせて概説する。

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