日本組織適合性学会誌
Online ISSN : 2187-4239
Print ISSN : 2186-9995
ISSN-L : 2186-9995
原著論文
PCR-SSP法による日本人集団のHLA-C遺伝子タイピング
安藤 等水木 信久山本 理絵宮田 義久脇坂 和男猪子 英俊
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 2 巻 2 号 p. 60-66

詳細
抄録

日本人非血縁健康成人74例及び10th国際HLAワークショップのB細胞ホモ接合体90例を対象としてHLA-C遺伝子のDNAタイピングをPCR-SSP(polymerase chain reaction-sequence specific primers)法にて施行した. Bunceらの方法(1,2)に準じて, 19種類のプライマーセットを合成し, ダイビングに用いた. その結果, 血清学的にダイビング可能なHLA-C抗原(Cw1-Cw10)はすべてPCR-SSP法により, 簡単かつ迅速にDNAダイビングが可能であった. 一方, 良い抗血清がないため血清学的にダイビング不可能な, いわゆるHLA-CブランクとなるHLA-Cアロ抗原型に関しても, PCR-SSP法により簡単にダイビングが可能であった. HLA-Cw3抗原は, PCR-SSP法により数個のアリルが個別にDNAダイビングが可能であった. さらに, 今回新しいアリルの存在が示唆された. 血清学的にダイビング可能なHLA-C抗原(Cw1-Cw10)の抗原頻度は, PCR-SSP法によるDNAダイビングのアリル頻度と一致していた. また, 血清学的にダイビング不可能なHLA-Cw*12, -Cw*14, -Cw*15アリル頻度は, それぞれ16.2%, 23.0%, 6.8%であった. HLA抗原系の解析は抗血清の発見を発端に, これに対応する抗原が同定され, 蛋白ならびに分子レベルでの解析へと進展してきた. 一方, 近年急速に発展したバイオテクノロジー(組換えDNA技術や細胞工学的手法)の応用により, HLA抗原の構造と機能の解析のみならず, 臨床医学への応用面においても, これまでとまったく違ったアプローチが可能となり, 従来の方法では検出できない多型性が多く存在することが明らかになった. 現在, HLA抗原には血清学的に同定できる129種あまりの多型性が知られている. しかし, DNAレベルでの多型性については未知の部分も少なくない. 特にHLA-C抗原はHLA-Cw1〜Cw10の抗原が公認されている. しかしながら, 血清学的同定は他のクラス抗原に比べ困難であり, いずれの人種においても30〜50%(遺伝子頻度)のブランクが残されている. 著者らは, この点を明らかにするためにDNA配列特異的なプライマーの組み合わせを用いてPCRの成否によりタイプを決定するPCR-sequence-specificprimer(PCR-SSP)法を用いて, 血清学的にタイプされたB細胞ホモ接合体について, アリル特異的プライマー19種によるHLA-C遺伝子の増幅の成否で判定した. また, 血清学的に判定不能の, いわゆるHLA-CブランクとなるHLA-Cアロ抗原型についても検討した. さらに日本人非血縁健康成人74例を対象にHLA-Cアリルの遺伝子頻度について調べた.

著者関連情報
© 1995 日本組織適合性学会
前の記事
feedback
Top