抄録
食後高脂血症は, 冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化疾患との関連が指摘されている。食後高脂血症は, 経口脂肪負荷試験 (OFTT) におけるトリグリセリド (TG) 反応により診断されることが多いが, 検査が繁雑で長時間を要するため被験者の負担が大きい。その上, 標準化された方法や正常値なども確立していない。本研究では基礎的検討として健常者を対象とし, (1) 脂肪負荷後TG反応に影響を及ぼす因子は何か, (2) OFTTを簡略化し, あるいはOFTTを行わずに, 脂肪負荷後TG反応を予測することは可能か, の2点を目的とした。健常人男女40人を対象としてOFTTを実施し, インスリン抵抗性関連指標 (HOMA-IR, HOMA-β, QUICKI) をはじめとする他の各種空腹時採血指標や対象者の特徴とともに重回帰分析を用いて検討した。その結果, TGの曲線下面積 (TG AUC) は空腹時のTG値, apoA-II, HOMA-β, HDL-Cが, それぞれ独立した有意な予測因子であった。TGのピーク値 (TG peak) には空腹時のTG値, apoA-II, インスリンが関与していた。以上の結果より, 今回のOFTT時TG反応には, 空腹時TGとともにインスリン抵抗性や血中アポ蛋白A-IIなどが独立して関連していることが示された。これらの結果より, 対象者の特徴と空腹時単回採血結果より, OFTT時TG反応はOFTTを実施しなくてもかなり予測し得ることが示唆された。今後は有疾患者も含め, 多数例で検討する必要があるものの, 本研究の結果は食後高脂血症の病態の解明, また診断法確立の一助となると考えられる。