2014 年 30 巻 1 号 p. 1-11
抗寄生虫薬avermectin の生産菌として知られているStreptomyces avermitilis ATCC 31267T のゲノム配列が2001 年に論文発表され(Omura et al., 2001),同基準株S. avermitilis MA-4680T の全ゲノム配列として9 Mb の染色体と94 kb のプラスミドSAP1 のDNA 配列がGenBank/EMBL/DDBJ で公開されている(Ikeda et al., 2003).今回MA-4680T に由来するS. avermitilis NBRC 14893T のゲノムDNA を鋳型としたPCR で,公開されているゲノム配列には存在しない未知のNRPS 遺伝子が増幅するという不可解な現象が確認された.その原因を調べるためにNBRC 14893T をゲノム解析した結果,公開されているゲノム配列には存在しない配列を見出した.この中には約40 kb のNRPS 遺伝子クラスターや約65 kb のNRPS/PKS ハイブリッド遺伝子クラスターが存在し,それぞれdemethylcomplestatin と新規oxazolomycin 類縁体の生合成に関与することが示唆された.S. avermitilis の基準株(MA-4680T)はAgricultural Research Service Culture Collection(NRRL) を経た後に,KCC Culture Collection of Actinomycetes, Kaken Pharmaceutical Co., Ltd.(KCC)とAmerican Type Culture Collection(ATCC)に渡っている.NBRC 14893T はKCC 株に由来し,2001 年のゲノム解読株はATCC 株に由来している.Streptomyces ではプラスミドの欠落やゲノムの組換えなどが容易に起こり得るので,本研究で見出した2 つの生合成遺伝子クラスターは基準株がNRRL からATCC に渡った後のどこかの段階で欠落したのであろう.