日本微生物資源学会誌
Online ISSN : 2759-2006
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The yeasts, a taxonomic study 第5版の Key to species による国酒酵母の分類学的特徴付け
森谷 千星小泉 麻衣子中山 俊一鈴木 健一朗門倉 利守
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2020 年 36 巻 2 号 p. 25-37

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抄録

清酒,泡盛,焼酎が「國酒」に位置づけられ,国酒醸造に用いられる清酒酵母,泡盛酵母,焼酎酵母は国酒酵母(kokushu yeast)と総称できる.これらの酵母は,1952年に出版された The yeasts, a taxonomic study(以下 The yeasts)で清酒酵母が Saccharomyces cerevisiae に分類されたことを機に,ほとんどが分類学的には S. cerevisiae として扱われている.しかし,S. cerevisiae は多様な起源を有する複合群として成り立っており,実際には国酒醸造に適した酵母は,独自の特性を有している.そこで,多くの国酒由来の酵母を収集し,分類学的特性を再確認することを目的に,The yeasts 第5版の Saccharomyces 属 Key to species に従って,国酒由来の酵母96株の特徴付けを行った.Key to species の7項目の生理学的試験のうち,特にビタミン欠如培地での生育試験において,S. cerevisiae は陰性とされているのに対し,国酒由来の酵母の90株は陽性を示した.Key to species の結果から,これら国酒酵母は S. cerevisiae とは異なる性質を有し,他の種とも一致しない一群を形成し.本研究では国酒酵母を含む Saccharomyces 属の表現性状で改めて整理を行い,その結果は Saccharomyces 属の種レベルの分類体系の再構築の基盤となるとともに,実用上の有用菌株の選択にも貢献するものと考えられた.

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© 2020 日本微生物資源学会
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