日本微生物資源学会誌
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多細胞性ボルボックス系列緑藻8属の凍結保存
森 史田中 陽子松﨑 令野崎 久義山口 晴代河地 正伸
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2023 年 39 巻 2 号 p. 77-87

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抄録

性の進化と多細胞化が同時に研究できる材料である多細胞性ボルボックス系列緑藻を用いた研究が世界的に進展している.しかし,本生物群では継代培養の経過とともに性発現能力や形態形成能力が低下するにもかかわらず,各国のカルチャーコレクションでは本群のほとんどが継代培養法で維持されている.このままでは本群を用いた「性進化と多細胞化」の研究が次世代には伝えられないという結論にいたり,われわれは多細胞性ボルボックス系列の凍結保存株の確立を目指している.今回,16–32細胞性の本系列の6属(Pandorina, Volvulina, Yamagishiella, Colemanosphaera, Platydorina, Eudorina)および4細胞性の2属(TetrabaenaBasichlamys)で凍結保存条件を検討した.2ml クライオチューブを用いた2 段階凍結法で,凍結保護剤としては6% N,N-dimethylformamide(DMF),3% hydroxyacetone,5% methanol を用いて凍結後の生存を比較した.その結果,各属で6% DMF または5% methanol の条件で0.1%以上の the most probable number 生存率が得られた.これらの至適凍結条件を用いることで,国立環境研究所微生物系統保存施設保有の8属99株の中で88株を凍結保存に移行することができた.

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