2023 年 39 巻 2 号 p. 89-94
2020年,収穫後に乾燥・貯蔵された新潟県産籾の一部に異臭が発生し問題となった.原因微生物を特定するため,表面殺菌した被害玄米とその籾殻および無殺菌の両試料を4種類の培地に静置し,10~15日間,暗所で25℃に保温した.その結果,多くの真菌類および細菌が分離されたが,それらにはカビ臭は感じられなかった.一方,無殺菌の玄米と籾殻を置いた素寒天培地上では約半数の玄米およびすべての籾殻から淡黄色ないし白色粉状の放線菌が生育した.これらの分離菌株はすべて強いカビ臭を放ち,コロニーの特徴から同一種と考えられた.その代表菌株を精米に接種した結果,カビ臭の発生が再現された.普通寒天培地上で50日間培養した同分離菌株のコロニーは,直径10mm 以下,表側中央は淡黄色で円錐状に盛り上がり放射状のしわがあり,周縁は乳白色でフリル状を呈した.同株は気生菌糸かららせん状に連鎖する胞子を大量に形成した.以上の培養特性,形態および16S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づき,本菌は Streptomyces 属菌と同定され,今回のカビ臭の原因微生物と考えられた.2020年は収穫前に多くのイネが倒伏したため,籾に付着した上記放線菌が増殖しカビ臭が発生したものと考えられた.