民族學研究
Online ISSN : 2424-0508
19 世紀フィジーにおける首長と土地処分権
宮崎 広和
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1992 年 57 巻 2 号 p. 197-221

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抄録

19世紀フィジーにおける首長によるヨーロッパ人への土地売却の問題に対する植民地政府の対応は, 首長には, 土地所有者の承認をえずに, 土地を売却する権利はないという原則によって特徴づけられる。19世紀のヨーロッパ人の間では, フィジーの首長制はヨーロッパ人との接触によって専制的になったと理解されていたが, 首長による土地売却もその結果であると考えられた。こうした専制的な首長のイメージは, 土地売却の正当性をめぐる審理の結果にも反映し, 土地を売却した首長が主張した土地処分権は慣習的なものとして認められなかった。他方, 植民地政府は, フィジー人の土地を非フィジー人へ賃貸する際に生ずる地代を, 植民地体制において首長に付与された官職の段階に応じて分配する体系を作り上げた。このように, 土地に対する首長の権利は, 植民地統治を経て, まったく別の新しい序列のなかに再定義されたといえる。

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© 1992 日本文化人類学会
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