民族學研究
Online ISSN : 2424-0508
ワカを掘る先住民 : 植民地時代ペルーにおける資本主義の拡大と先住民の生存戦略(<特集>世界システム論と人類学)
関 雄二
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1999 年 64 巻 2 号 p. 178-198

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抄録
本論は, 16世紀半ばから17世紀のペルー植民地時代初期に焦点を当て, 征服者スペイン人がもたらした西欧起源の資本主義経済が先住民社会にどのように浸透し, 拡大していったのかを考察する。その際, とりあげるのは, 貴金属を主体とした副葬品が眠る古代の遺跡の発掘であり, その事業を支えた人々の組織や契約関係の分析を通じて, スペイン人ばかりでなく, 先住民が積極的に参加していく様相を明らかにする。そこでは従来機能していた土着の社会原理や世界観を, 新たに登場し, 強制された資本主義とキリスト教に接合させていく先住民やそれを率いる首長の自律性を提示する。これにより, ウォーラーステインが近代世界システム論で唱えた資本主義の浸透による「伝統的」原理の崩壊という短絡的な図式への批判の一端を示すことになる。
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© 1999 日本文化人類学会
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