未来共創
Online ISSN : 2435-8010
共生/共創の多角的検討―2:「協同翻訳」から始まる共生/共創
上辺だけではない議論と実践のために
桂 悠介佐々木 美和八木 景之
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 8 巻 p. 177-207

詳細
抄録

本稿では、「フォーラム 共生/共創の多角的検討(1)違和感とフラストレーションを起点とした協同的オートエスノグラフィー」を受け、いかに「当事者」の声を聴き、向き合いうるかを論じる。  まず、共生や共創の前提となる「他者の声を聴く」際、聞き手が他者の「部分」だけではなく「全体」と向き合う姿勢をもつ必要があることを指摘する。次いで、当事者の「声を聴く」ための方法として、宗教的言説をめぐって当事者と非当事者が共に参画するハーバーマスの「協同翻訳」論に着目する。その上で、協同翻訳が宗教に限定されない共創の方法として応用しうることを論じる。  第三に、フォーラム1で表明された、現在の学術的な共生や共創が「当事者のため」のものになっていないのではないか、一定の基準により選抜された人々による「制度的優生思想」と呼びうるものではないかという違和感やフラストレーションに対して、リリアン・ハタノ・テルミの当事者の4F(Fact、Fear、Frustration、Fairness)理解の教育や竹内章郎の「能力の共同性」論を通した、より公共的な実践や議論への「翻訳」を試みる。最後に、協同翻訳をより積極的に行うための、「インリーチ」や熟議をめぐる議論を紹介する。

著者関連情報
© 2021 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top