2012 年 30 巻 2 号 p. 130-136
我々は広域連携医療ネットワークシステム研究会(略称:GCM研 http://www.gcm-sso.jp/)を2008年より立ち上げ,静岡県の某医師会と地域医療連携を推進している.これまで地域医療連携にかかわる分野では,さまざまな試みがなされているが,それらの多くは限定的な医療機関による連携であり,未だ複数の医療機関がシームレスに医療サービスを利用できる環境にはないのが現状である.システム的にはC/S(クライアント/サーバ)方式とWebの組み合わせによる構成で,概して高価な ICT設備の導入やシステムの維持コスト,管理運営の煩わしさなどの問題が多く,地域医療連携普及を妨げる主たる原因となっている.また,このたびの東日本大震災の発生により,住基ネットのデータやレセプトデータが失われ,震災時における医療データ保存の重要性が実感されている.GCM研では,いち早くクラウドコンピューティングの有用性,有効性に着目し,研究・開発に取り組んできたが,上記の問題解決に,その技術を活用し,広域的な地域医療連携システムの普及を目指すプロトタイプの構築を提案する.今回はその有効性を実証するために,「肺がん検診CR読影システム」の試行例を紹介する.