モルフォロジーは,画像処理の一手法として重要な位置を占めている.それは一般的には多次元空間での集合演算として定義される.したがって,CT像やMRI像などの空間的三次元医用画像に適用できることは論をまたない.また,形状を意識した演算を行うことが可能であり,実際に医用画像中の異常陰影の検出に適用して効果を上げている報告例があり,本稿ではその中からセグメンテーション,肺がん陰影候補抽出,構造解析や三次元内挿法など,主だったものを紹介した.また,三次元になると計算時間が大きな問題となる.そこで処理の高速化の手法についても紹介した.
モルフォロジー処理は1990年ごろより医用画像処理・解析に応用され始め,いまではさまざまな画像処理の前処理などに不可欠な存在となっている.本稿では,Medical Imaging Technology(MIT誌)で掲載された論文を中心にモルフォロジー処理の医用画像処理・解析へのこれまでの応用例の解説,ならびに今後の展開を示す.医用画像処理に取り組み始めた学生・研究者にとって,本稿がモルフォロジー処理の意義やその有用性を学ぶ機会となれば幸いである.
Perfusionによる肺血流解析は,モデル有り・モデル無しの2種類に分けられる.モデル有り手法は生理・物理的に妥当な結果を得られるが,条件設定が厳密で扱いが難しい.一方,モデル無し手法は簡便だが,系の性質を表すインパルス応答を,入力と出力の関係から逆問題を解くため1入力解析に限定されていた.本研究では,簡便性と精度を兼ね備え,多入力系解析を可能とするモデル無し手法を提案し,解析の標準化を目指す.提案手法では,インパルス応答を深層学習アルゴリズムにより順問題に沿った形で定式化し,直接推定することで多入力解析を実現した.比較実験の結果,提案手法は実装が簡単であること,雑音の影響を受けやすいものの,実測のSNR の範囲では推定誤差が少ないことが確認された.一方,多入力解析の場合,モデルがないため血流成分同士が相互干渉し,精度が低下する欠点があることがわかった.
本稿では,筆者らが開発した骨シンチグラム解析のためのプログラム医療機器(Software as a Medical Device,SaMD)の開発の経緯,実用化とその後について述べる.まず,データベース構築やプログラム開発などの実用化に至る経緯について説明する.また,実用化後に行ったversionの更新や,プロトタイプシステムを利用した規制科学の研究への展開についても触れる.