2021 年 39 巻 3 号 p. 117-123
本稿では,自然の形成原理により自動で大規模画像データセットを構築する方法論について解説する.具体的には,任意の数式や関数を用いて画像パターンやその画像カテゴリーを生成することにより事前学習のための画像データセットを構築する数式ドリブン教師あり学習について紹介する.2021年現在,自然を形成する法則のひとつとして知られるフラクタル幾何により生成されたデータセットであるFractalDBを用いた畳み込みニューラルネットワーク(CNN; convolutional neural networks)の事前学習モデルが,転移学習の文脈において比較的高い精度を実現している.現状,最も効果的といわれる教師あり学習には精度の面で及んではいないが,今後改善がみられる場合には,画像の使用権利やAI倫理の面での不安を軽減するデータセットとしての利用が期待される.